Copilot(旧Bing AI)とChatGPTの違いは?活用シーンを比較
Copilot(旧Bing AI)は無料でGPT-4 Turboを使える
Copilotの無料版には、2024年3月から「GPT-4 Turbo」が搭載されています。以前の大規模言語モデルはGPT-4でしたが、本アップデートによって無料ユーザーでもフルタイムでGPT-4 Turboを利用できるようになりました。
OpenAI社が開発したGPT-4 Turboは、2023年12月までの学習データをもつ大規模言語モデルです。コンテキスト長(入出力できるテキスト量)は128kトークンであり、これは英語で300ページ以上、日本語では150ページ以上の情報量にあたります。
一方で、ChatGPTにはさらに進化した「GPT-4o」が搭載されていますが、GPT-4以降のモデルを利用するには有料プランへのアップグレードが必要になります。
Copilot(旧Bing AI)とは?
Copilotとは、マイクロソフト社の検索エンジン「Bing」と連動した生成系AIのサービスです。大規模言語モデルの学習データに加えて、リアルタイムのウェブ情報を参照する機能も備わっています。
どのようなシーンに活用できるのか、いくつか例を紹介しましょう。
<Copilotができること>
・ユーザーによる質問への回答
・リソースとなるウェブサイトや出典の記載
・要約文の作成
・メールや文章などの下書きを作成
・コーディング(プログラミング)のサポート
・画像に映った商品の情報表示
・テキストで指示した画像の生成 など
Copilotの機能はバージョンによって異なり、2024年6月現在では以下のようなプランが展開されています。
Copilotは不定期でアップデートされており、2024年3月からは無料版にも「GPT-4 Turbo」の大規模言語モデルが搭載されました。従来のGPT-4より学習データが新しく、かつ入出力できるテキスト量も増えたため、導入できる業務や分野が拡大しています。
なお、AIに画像生成をさせる機能は、無料の「Copilot」または「Copilot Pro」で提供されているものです。2024年6月現在、「Copilot for Microsoft 365」にはAIによる画像生成の機能はありません。
なお、マイクロソフト社は法人向けのAIサービスにも力を入れており、Azure OpenAI Serviceの実用化を目指す「生成AI事業化支援プログラム」を実施しています。本プログラムには当社もパートナー企業として参画し、月次イベントのColumbus DAYなどに参加しております。
参考:Microsoft「Azure OpenAI Service リファレンスアーキテクチャ」
Copilot(旧Bing AI)とChatGPTの違い
同じ生成系AIサービスであるCopilotとChatGPTには、どのような違いがあるのでしょうか。下記の表は、両サービスの主な共通点や違いを比較したものです。
(※いずれもウェブから利用できるブラウザ版を想定。)
(※2024年6月25日現在の情報です。今後のアップデートなどにより、サービスの仕様は変わる可能性があります。)
(※Copilotの画像生成に関する情報は、無料版のCopilot、またはCopilot Proに関する情報です。)
以下では特に注意したいポイントに絞って、CopilotとChatGPTの違いを解説します。
1.ソースや出典の提示
Copilotはユーザーが質問すると、回答の末尾にソースとなるウェブサイトを掲載してくれます。特に指示をしなくても関連性の高い出典元が表示されるため、スムーズに情報収集やファクトチェックを行える可能性があります。
一方で、ChatGPTにソースや出典を提示させるには、基本的に「情報元を教えてください」などの指示が必要です。
2.利用制限
Copilotに質問回数の制限はありませんが、アップロードするファイルのサイズや回数については、以下の制限が設けられています。
ライセンスなし:1回あたり1MBまで、1日あたり5回のアップロードまで。
ライセンスあり:1回あたり10MBまで、アップロードは無制限。
(※上記のライセンスは、For Microsoft 365ライセンスのこと。)
一方で、ChatGPTは使用するモデルによって利用制限が変わります。たとえば、GPT-4oでは3 時間あたり80件、GPT-4では3 時間あたり40件のテキストを送れます。また、アップロードできる画像のサイズは、1枚あたり20MBが上限です。
3.料金プラン
前述の通り、Copilotでは3つの料金プランが展開されています。有料プランの料金は、個人向けのCopilot Proで月額3,200円、企業向けのCopilot for Microsoft 365は月額4,497円です。
ChatGPTについても、利用用途に応じた3つのプランが用意されています。
なお、Teamは最低2ユーザーの登録が必要であり、請求は年単位で行われます。
4.拡張性(プラグイン)
生成系AIの拡張とは、システムに新たなプラグインを追加し、生成系AIに独自の働きをさせることです。Copilotでは既存のプラグインのほか、独自の機能をユーザー自身で追加できます。
一方で、ChatGPTのプラグイン機能は2024年3月に終了となりました。代わりのサービスとして、2024年6月現在では独自の機能を追加できる「GPTs」が提供されています。
5.画像生成
Copilotでは作成したい画像のイメージを伝えると、「Designer」と呼ばれるツールを通してAI画像が生成されます。商用利用は避けることが無難ですが、本機能は無料プランでも利用できます。
一方で、ChatGPTにも同様の機能はありますが、有料プランでしか利用できません。AI画像を生成したい場合は、少なくとも月額20ドルを支払う必要があります。
Copilot(旧Bing AI)とChatGPTはどっちがいい?
ビジネス分野での活用を想定した場合、CopilotとChatGPTはどちらを選ぶとよいのでしょうか。結論からいうと、それぞれ異なる得意分野をもっているため、導入する業務や業種によって適したサービスは異なります。
ここからは、各サービスに適した業務やできることを紹介します。
Copilot(旧Bing AI)に適した業務やできること
Copilotは毎回の回答でソースや出典を明記してくれるため、効率的な情報収集に向いています。また、有料版のCopilot for Microsoft 365には、Microsoft 365アプリ(WordやExcel、PowerPointなど)との連携機能があります。各アプリにAIを導入できるため、以下のような業務に向いているでしょう。
<Copilotに適した業務>
・ファクトチェックが必要な情報収集
・メールの自動作成(Outlook)
・文章の要約や翻訳(Word)
・プレゼン資料やスライドの作成(PowerPoint)
・データ収集や分析、グラフ作成の自動化(Excel)
・ミーティング時の議事録を自動作成(Teams) など
特にMicrosoft 365アプリを普段から利用している企業は、Copilotの導入効果が高いと考えられます。
ChatGPTに適した業務やできること
ChatGPTの特徴は、基本的なコーディングにまで対応している点です。指示内容によってはコードの解釈や修正、変換まで対応してくれるため、効率的にプログラムを組める可能性があります。
また、2023年11月に提供が開始されたGPTsによって、独自のチャットボットを製作することも可能になりました。そのため、ChatGPTも工夫次第ではさまざまな業務に活用できます。
<ChatGPTに適した業務>
・コーディング(プログラミング)のサポート
・メールの下書き作成
・稟議書や契約書の作成
・プレゼン資料やスライドの作成
・SNSの投稿文の作成 など
なお、GPTsの自社開発が難しい場合は、さまざまなチャットボットが公開・販売されているGPT Storeの利用も検討してみてください。
Copilot(旧Bing AI)を使いこなすポイント
マイクロソフト社のCopilotは、ユーザーの使い方によって導入効果が変わります。以下では、Copilotを使いこなす3つのポイントを紹介します。
目的に合った「会話スタイル」を選ぶ
Copilotの入力画面では、以下の3つから会話スタイルを選べます。
より創造的に:会話的なコミュニケーションを図りたいときに向いている。
よりバランスよく:短い回答を望んでいるときに向いている。
より厳密に:詳しい情報を知りたいときに向いている。
同じ質問をする場合であっても、選んだ会話スタイルによって回答内容は変わります。質問・指示の難度や知りたい情報を踏まえて、目的に合った会話スタイルを選びましょう。
なお、一度選んだ会話スタイルを変更したい場合は、別のチャットウインドウに切り替える必要があります。
テキストと画像を組み合わせて指示をだす
テキストでのやりとりが難しい場合は、画像と組み合わせる方法もひとつの手です。テキストと画像を併用すると、AIはより多くの情報からユーザーの意図を読みとろうとします。
特に以下のようなケースでは、テキストと画像の組み合わせが有効になる可能性があります。
・サンプルと同様のスライド資料を作成してほしいとき
・形式が決まったグラフを出力してほしいとき
・これまで手書きしていた議事録を、似た形式で作成してほしいとき
なお、画像などのファイルを添付する場合は、サイズやアップロードの利用制限に注意してください。
必要に応じて連携・関連サービスを活用する
前述のMicrosoft 365アプリのように、Copilotは連携サービスを使うと活用範囲が広がります。例としては、ソフトウェア開発用のプラットフォームと連携した「GitHub Copilot」が挙げられます。
GitHub Copilotは、コーディング時に生成系AIがコードを補完してくれるツールです。一般的な形式のプログラムが得意分野であり、直感的に操作ができるようにUIも工夫されています。
また、マイクロソフト社は高度なAI環境を構築できるサービスとして、Azure OpenAI Serviceも提供しています。独自の学習モデルが必要な場合はAzure OpenAI Serviceを使い、通常業務にはCopilotを導入するなど、組み合わせ次第では業務の質が大きく変わってくる可能性があります。
Copilot(旧Bing AI)とChatGPTを使い分けよう
CopilotとChatGPTの得意分野は異なるため、両サービスを併用する選択肢もあります。それぞれの特徴を理解した上で導入すれば、さまざまな業務を効率化できるでしょう。まずは無料の範囲で活用しながら、有料プランの導入範囲についても考えてみてください。
なお、Copilotを提供するマイクロソフト社と当社は、パートナー企業としてさまざまな取り組みを行っています。Microsoft AI Tourなどのイベントや勉強会にもお誘い頂き、当社開発の検索エンジン「Lightning Search」については、課題解決につながるご提案をして頂きました。
引き続き、当社はマイクロソフト社とのパートナー関係を深めながら、AIの実用化に向けて邁進してまいります。