越境ECで売れる商材とは?
経済産業省の調査(※1)によると、世界のBtoCにおける越境ECの市場規模は2014年に2,330億USドルでしたが、2020年には9,940億USドルに拡大すると予測されています。6年で4倍以上という急速な拡大が見込まれている背景には、パソコンやスマートフォーンの普及によりインターネット環境が整っていることや、海外製品でも安心・簡単に取引できるオンラインショッピングモールや決済方法が確立してきていることが考えられます。
今回は、これからも拡大を続けると予測される越境EC市場でどのような商材が売れる可能性があるのか見ていきましょう。
越境ECとインバウンド消費の関係
越境ECで売れる商材はインバウンド消費と大きな関係があると考えられています。
外国人観光客が日本で購入した商品を気に入り、自国でリピート購入するユーザーがいるためです。
これは経済産業省の「平成 28 年度電子商取引に関する市場調査」のなかにある、中国人消費者が越境ECを利用する理由として「海外で購入しリピート購入したい」が35%という情報からも裏づけられます(※2)。さらに日本で購入した商品の良さが広がることで多くのユーザーの購買意欲が促進され、越境ECでより売れる商材となる可能性もあります。
近年越境ECで売れている商品とインバウンド消費の両方から考えることで、越境ECで売れる商材が見えてきます。
越境ECで売れる商材
越境ECで売れる商材やユーザーが購入する理由は、地域や国によって異なります。
アパレル商品
経済産業省の「平成28年度電子商取引に関する市場調査」の情報では、2016年に越境ECで最も売れた商品は、アメリカ・中国ともにアパレル製品、靴、アクセサリーでした(※3)。アパレル関連のアイテムは、国を問わず越境ECで人気の高い商材です。
また、観光庁が出している平成29年10月〜12月期の訪日外国人客の費目別購入率を見ると洋服やかばん、靴の購入割合は香港や中国、タイ・シンガポール・マレーシアなどの東南アジアの国々で4割〜5割と高く、アジア各国で日本のファッションの人気が高いことが分かります。
開発途上にあるアジアの国々でもEC市場規模は急速に拡大しているため、今後、越境ECを使ったアパレル商材の取引はより活発に行われると考えられます。
化粧品
経済産業省の「平成28年度電子商取引に関する市場調査」にある情報では、2016年に越境ECで中国人消費者に売れた商品の一位は、アパレル関連のアイテムと並んで化粧品でした(※3)。
平成29年10月〜12月期の訪日中国人客の費目別購入率を見ても、化粧品・香水は8割を超えており、越境ECで今後も売れると予測できる有力な商材です。
化粧品に限りませんが、中国人消費者が越境ECを利用する理由は「商品の品質が保証されている」(※2)ことが最も大きかったという調査結果があります(2016年)。中国はEC市場以外の小売市場でも偽物や粗悪品が出回っているため、正規品や品質の高い製品を安心して購入できることは購買を決定する大きな動機になります。
また、中国の越境ECのユーザーは女性が約7割以上ともいわれているため、化粧品のような女性の興味をひく商材は拡販が見込めます。さらにSNSの使用率が高いユーザー層も多く、口コミの拡散による宣伝効果も期待できます。
化粧品や香水は、タイやマレーシアなど東南アジアの訪日外国人客の費目別購入率を見ても3割〜4割を占めているため、今後アジアを中心に越境ECで売れる商材として有力だと考えられます。
マンガ、アニメ、キャラクター関連商品
観光庁が出している平成29年10月〜12月期の訪日外国人客の費目別購入率を見ると、マンガやアニメ、キャラクター関連商品の購入率はスペインで3割以上、イギリス・ドイツ・フランス・アメリカは1割〜2割と、海外で一定の人気があることが分かります。
マンガやアニメ、キャラクター関連商品は、現地では日本より高値で取引されることもあるため、越境ECを利用して購入するユーザーも多いのが現状です。
家庭用電化製品
日本の電化製品は品質が良く機能面でも優れており、耐久性もあるため越境ECで人気があります。
平成29年10月〜12月期、訪日外国人客の電気製品の費目別購入率を見ると、中国・台湾・ベトナムは2割以上で、この3国は欧米諸国やその他アジア各国と比較して購入率が高く、越境ECでも売れる可能性がある商材です。実際に越境ECを使って家電を購入する中国人消費者の多くは、日本の家電を購入しているようです。
中古品
中古のブランド品も欧米やアジア各国で一定の需要があります。中古品というと海外では状態の悪い商品も多いですが、日本の中古ブランドは状態の良いものが多く、信頼されていることが人気の理由です。
「MADE IN JAPAN」は海外で人気ですが、「日本人向けに販売されたもの」「日本人が使っていたもの」というだけでも海外ユーザーに評価されていることが分かります。
海外ユーザーが求める商材は何か
外国人ユーザーが越境ECを使って買い物をする理由は、自国にはない商品だったり自国の品質では不安だったり、自国で買うより価格が安かったりとさまざまです。
国や商材によっても利用する理由は異なりますが、いずれの場合も、ユーザーは他国で購入することに価値があると考えているため、越境ECを使って取引がされています。
一見「日本では売れない」「日本では一般的」と思うような商材でも、海外では受け入れられる可能性が大いにあるので、インバウンド消費の動向を読んだり海外ユーザーの視点に立って考えたりしながら、求められている商材を取り入れることを検討してみましょう。
参考
経済産業省 平成 28 年度 電子商取引に関する市場調査
http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170424001/20170424001-2.pdf
※1 95頁
※2 106頁
※3 105頁