ECサイトでリアル店舗と同じサービスの提供を目指す。ナルミヤ・インターナショナルのECリニューアル戦略
百貨店で展開する「mezzo piano」や「pom ponette junior」、「ANNA SUI mini」、ショッピングセンターで展開する「petit main」や「Lovetoxic」など、子ども服のブランドを多数展開するナルミヤ・インターナショナル。「夢は、世代を超えて」という経営理念を掲げ、ファッションに限らず子どもたちの生活全体を彩る全てをプロデュースすることを目指している企業だ。
EC事業を本格的にスタートしたのは2008年。それから10年が経過した現在は大幅なリニューアルを行なった。
そこで今回は、国京紘宇さんと中島浩賀さんに、リニューアルの背景を聞く。
ナルミヤ・インターナショナル 基本情報
<社 名>
株式会社ナルミヤ・インターナショナル
<設立年月日>
2016年6月
(1995年8月設立の旧ナルミヤ・インターナショナルを前身とする)
<事業内容>
ベビー・子供服の企画販売事業、オリジナル、ライセンスブランドの展開による、子供服および、関連製品の製造加工販売
<従業員数>
1,032名(2018年5月現在)
<売上高>
269億円(2018年2月期)
<所在地>
東京都港区芝公園2-4-1 芝パークビルB館9階
マルチチャネルでマルチブランドを展開
――子ども服ブランドを多数展開されていますが、御社のこだわりや競合他社と差別化している点を教えてください。
国京 ショッピングセンターと百貨店、両方のチャネルをもち、売上も同等というころが他社にはない強みですね。多くのメーカーは、百貨店中心、ショッピングセンター中心と、どちらか一方に軸足を寄せていると思います。
弊社も以前は百貨店のみで展開していたのですが、百貨店の売上が大きく下がったことがあって、それからショッピングセンターやECにも展開をはじめ、V字回復したという経緯があります。
マルチチャネルで、さらにマルチブランドを展開している点で差別化を図っています。
中島 マルチブランドも大きなポイントですね。一般的に、1社でファッションブランドを2〜3個もっていれば「多いほう」ですが、弊社の場合は、カテゴリが新生児・トドラー・ジュニア・大人とあり、「petit main」や「Lovetoxic」、「ANNA SUI mini」、「mezzo piano」「BLUE CROSS」など、約15のブランドを展開しています。
ECサイトには全ブランドの商品を用意しているので、リーズナブルな商品やブランドを購入して頂いたお客様が高価格帯の商品まで一緒に購入してくれるという動線ができつつあります。そこもまた強みですね。
ECでもリアル店舗と同じサービスを提供したい
――百貨店専門からはじまり、その後にECもはじめたというお話でしたが、ECはいつ頃からスタートしたのでしょうか?
中島 最初にはじめたのは2006年12月です。私は担当ではなかったのですが、百貨店だけだと売上を押し上げることが難しいと判断し、ネット通販もやることになり、福袋専用でECを立ち上げたのがはじまりです。
その後は2007年の下半期の半年だけ、さまざまなアイテムを販売して感触を確かめて、ECの準備を進め、2008年8月に本格的にECサイトをオープンしました。
――当時はどのようなコンセプトでECをオープンしたのでしょうか?
中島 「ナルミヤの商品を買いたくても買えないお客様に買える場所を提供する」ことです。このECのコンセプトは当時から今まで変わっていません。
当時、弊社は百貨店であれば地方の小さな百貨店にまで出店していたのですが、採算がどうしても合わず、撤退することがありました。そうすると、そこで購入頂いたお客様がナルミヤの商品を買う場所がないという状況が出てきたんです。
それに加えて、共働き世帯が増えてきて、子どもは土日も塾や習い事があり、週末に家族全員で百貨店にショッピングに行く時間が取れないという背景もありました。
そこで、どの地域に住んでいる人も、買い物に時間がない人も、ナルミヤの商品を買うことができるECサイトをオープンすることにしたんです。
――実際にECをオープンしてみて、反応はどうでしたか?
中島 百貨店のリアル店舗で購入していたお客様から問い合わせフォームに「店舗のほうがサービスがいいですね」という声が届きました。
それをきっかけにして、「ECでもリアル店舗と同じサービスを提供する」ことを目指すようになりました。たとえば、当時のECはギフト対応ができていなかったので、送付担当の社員を教育してリアル店舗と同じようにギフトを送れるようにしたり、店舗で「こちらの服もどうですか?」と勧める行為をECでも実現するためにレコメンド機能を付けたりと、さまざまな試みをしてきました。
今もリアル店舗に近づけるための工夫を続けているところです。
理想は「接客」と「試着」もこなすECサイト
――昨年(2017年)10月からECリニューアルのプロジェクトが進みはじめたと聞きました。リニューアルをしようと考えた背景は?
中島 ECとリアル店舗は販売しているアイテムが同じというだけで、在庫、顧客情報、ポイントサービス、さらにはマーケティング施策に至るまで、全てがバラバラで統合できていなかったんです。
そろそろ統一して、より良い場にしていく必要があると考え、昨年からリニューアルのプロジェクトをはじめました。
――リニューアルプロジェクトがはじまった後の具体的な動きを教えてください。
国京 現行のシステムでは古すぎて、統合するのは難しいとわかったので、パッケージごと変更することにしました。
それからはECの外部コンサルタントを入れて、複数のパッケージメーカーに声をかけ、どこにするべきか第三者の目線も入れながら選んでいきました。最終的に3社のコンペになったのですが、ecbeingさんに決めた理由の1つは、開発担当の方が「一生面倒見ます」と言ってくれたことですね(笑)。
完成したらお付き合い終了ではなく、運営、保守に至るまで責任をもって担当してくれるというところに安心感を覚えました。開発とその後の保守の窓口も一緒というところが安心しました。他にも、新サービスを続々開発し、クラウドで追加できる点や多様な実績、コスト面など、複合的な観点からecbeingさんにお願いすることにしました。
――今年8月にECサイトをリニューアルオープンしましたが、どのような点に注力してリニューアルを進めたのでしょうか?
中島 お客様が購入しやすいデザインや購入動線を意識してリニューアルをしました。ECとリアルの統合は今回ではなく次のリニューアルになると思いますが、今後はポイントシステムの統合なども実現する予定です。
国京 統合は、ecbeingさんに紹介していただいた顧客データベースにポイントデータを加えて統合し、物流面ではRFIDを導入することで配送も効率化していこうと考えています。
――“今後”の話が出たので、将来的に実現したい「理想のEC」像を教えてください。
中島 ECで目指しているのは、先ほど言った通り「リアル店舗と同じサービスを提供する」ことですが、その点で今のところ実現できていないと感じているのは「接客」と「試着」の2つです。
接客はAIやチャットロボットなど、いろいろなツールが出てきていますが、まだこちらが求めるレベルのものはないですね。人工知能が顧客情報を蓄えて適切な接客をするツールをecbeingさんが開発して、標準装備してくれることを期待しています(笑)。
試着に関しては最近ようやくZOZO SUITが出て、その動向に注目しています。お客様はECで購入する際に試着できないことを不安に思っているので、これも良いツールが出てくれば道入をしていきたいと思っています。
基準をもってプロジェクトマネジメントすることが重要
――現在のEC化率と、今後の目標値は?
中島 昨年度のEC化率は業界平均以上だと思いますが、今後は、キッズアパレルのECとしてNO1を目指したいと思います。
EC化率を伸ばすためにマーケティング施策にも注力しています。最近はあるWEB接客ツールを導入したところ、新規会員が約2倍になりました。またあるレコメンドエンジンも効果が大きく、アパレルの業界平均売上以上となりました。今後もいろいろと試していきたいと思っています。
――ありがとうございました。最後に、これからECをリニューアルする企業に向けて、アドバイスや注意点を教えてください。
国京 ベンダー選定の際に、「プロジェクトマネジメントのスキルがどれほどなのか、またその体制があるのか」がポイントになると思います。何を意思決定の基準にするのか、それに対して、フラットにアドバイスを頂けるような人材、体制がある会社がいいですね。そうすると納得感をもってプロジェクトを進められると思います。
株式会社ナルミヤ・インターナショナル
国京紘宇(くにきょう・ひろたか)
株式会社ナルミヤ・インターナショナル
中島浩賀(なかじま・ひろよし)
●取材・文:廣田喜昭
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