Webとアプリのいいとこ取り? Googleが推進するPWAとは
プログレッシブウェブアプリ、いわゆるPWAをご存知ですか? PWAは2015年にGoogleからリリースされて以来、注目を集め続けているツールです。Web上でネイティブアプリと同じようなUXを体験でき、スピーディーに操作できる点が魅力です。Webサイトのコンバージョン率や売上アップを目指す方は、PWAについて知らないと損をするかもしれません。
今回は、PWAの特徴や実際に導入して成果を挙げている企業の事例などをご紹介します。
PWAとは
PWAはService Worker(サービスワーカー)やApp Shell(アプリケーションシェル)などを用いて構築される仕組みを指します。タブレットやデスクトップ、モバイルなどのデバイスに関係なく、ユーザーがWeb上でネイティブアプリと同じように画面を操作できるこの画期的な仕組みは、ユーザーと企業の両者にさまざまなメリットをもたらしてくれます。
PWA導入のメリット
1.オフラインでも閲覧が可能
PWAにはオフラインアクセス機能が搭載されており、デバイスがインターネットにつながっていない場合でもオフラインキャッシュデータを基にWebサイトを閲覧できます。
2.ページの読み込み速度が速い
2018年2月にGoogleが発表した資料によると、サイトの表示速度が1〜5秒の場合に直帰率が90%であるのに対し、表示速度が1〜3秒の場合は32%に留まるという結果が示されています。ユーザーの直帰率が抑えられるというのは、サイト運営者側にとって重要なポイントです。
PWAが魅力的なツールである理由の一つとして、機能性の高さが挙げられます。動作に必要なファイルやデータをローカルに保存し、データ通信量を抑えることでネイティブアプリよりも速くページを表示できます。
また、インストールするファイルのほとんどが数百バイトほどと軽量で高速表示が可能な点や、データ通信の標準がHTTPSになっており安全性が高い点もPWAの特徴です。
3.ホーム画面へのアイコン設置
PWAを導入したWebサイトはホーム画面にアイコンを設置できます。ユーザーはアプリストアからネイティブアプリをインストールすることなくホーム画面にアイコンを設置でき、少ない通信量で高速表示されるWebサイトを閲覧できます。
4.プッシュ通知の設定
PWAを構築するService Workerタグによってプッシュ通知を設定できます。ユーザーは新規コンテンツのお知らせや、ECサイトで購入手続きが完了していない場合に催促する通知などをアプリと同じように受け取れます。
5.主要ブラウザで操作可能
現時点ではGoogle chrome、Firefox、Safari(iOS11.3以降)などの主要なブラウザがPWAに対応しています。デバイスだけでなくブラウザを選ばずに広く利用できる点も、PWAの魅力の一つです。
6.審査が必要ない
ネイティブアプリはAndroidやiOSなど、OSに依存しているため、個別の対応が必要です。しかしPWAはOSに依存せず、あくまでもWebサイト上で機能するので、OSごとの対応が必要なく開発の手間を省けます。
また、PWAはアプリストアを介する必要がないため、ネイティブアプリ作成のガイドラインなどにとらわれず、開発を進められます。特別な審査もなく、準備ができ次第すぐにリリースすることが可能です。
PWA導入のデメリット
PWAには多くのメリットがありますが、管理に手間とコストがかかるという、サイト運営者にとってのデメリットも存在します。
例えばネイティブアプリを既に運用している場合、キャッシュの管理が複雑になるだけでなく、管理費も2倍になる可能性があります。
実装の事例
2015年のリリース以来、世界のさまざまな企業が自社のWebサイトにPWAを取り入れて成果を上げています。
Lancôme(ランコム)
コスメティックブランドのLancômeは、モバイルブラウザから商品を購入するユーザーが15%にしか満たないという2016年の結果を受け、ユーザーがスマートフォンで商品購入に至るまでのフローに要因があると考えました。そこで、普段商品を購入しないユーザーにも見つけやすく、あらゆるデバイスで快適かつスピーディーに操作できるPWAを導入したところ、ページの読み込み時間が84%減少し、コンバージョン率は17%増加しました。
出典1:https://developers.google.com/web/showcase/2017/lancome
SUUMO(スーモ)
日本の大手不動産会社SUUMO(スーモ)もPWAを導入して成果を上げている企業の一つです。SUUMOはPWA導入によってホーム画面へのアイコン設置、オフラインキャッシュ、プッシュ通知機能を追加しました。結果としてSUUMOのモバイルサイトの読み込み時間は75%減少し、プッシュ通知の開封率は31%向上しました。
出典2:https://developers.google.com/web/showcase/2016/suumo
日経電子版
日本経済新聞社の電子版、日経電子版は毎月900本の記事を配信し、会員数は無料会員を含めると350万人を超えます。日経電子版では2016年あたりからPWAの開発を進めています。PWA導入後はページの表示速度が以前のモバイル版の約2倍になり、ホーム画面にアイコンを設定したユーザーからのアクセスも約2倍になりました。
出典3:https://speakerdeck.com/player/44170332850e43b090b4568cd07c1f5d
PWAを導入してコンバージョン率の向上を目指そう
PWAはWebサイトに導入することで、ネイティブアプリ以上にスピーディーで快適な操作を体感できるツールです。
今後、普及率が向上するにつれてAIアシスタントやAIスピーカーとの連携、実店舗との融合など、より便利で魅力的な機能が増える可能性を秘めています。
ユーザーとのエンゲージメントやECショップのコンバージョン率アップを目指す企業はPWAの導入を検討してみてはいかがでしょうか。