ECサイト事業者は『キャッシュレス化』にどう対処すべきか?
日本政府は2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を視野に入れ、キャッシュレス決済の普及を目指しています。
現に、スーパーやコンビニといった身近な店頭においても電子マネーやおサイフケータイを利用する人々が増えており、日本のキャッシュレス化は着実に進行しつつあります。
今回は日本のキャッシュレス化の現状や今後の展望を踏まえつつ、来たるキャッシュレス社会にECサイト事業者がどのように対処すべきかを解説します。
キャッシュレス化の現状
キャッシュレス決済とは、物理的な現金(紙幣・硬貨)を使わない決済を指し、クレジットカードや電子マネー(交通系、流通系)、モバイルウォレット、デビットカードなどがあります。
日本のキャッシュレス化は、世界各国と比較するとまだまだ低水準にあります。
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経済産業省のレポートによると、2015年の日本のキャッシュレス決済比率は18.4%でした。それに対し韓国では89.1%、中国は60.0%、イギリスは54.9%、アメリカは45.0%となっており、日本のキャッシュレス決済比率の低さが際立っています。
キャッシュレス決済比率が低い理由
日本のキャッシュレス化が進んでいない要因は、「現金主義」が多くの国民に浸透しているためと考えられますが、その背景には「偽札が少なく、現金に対する信頼度の高さ」や「治安の良さ」「店舗のPOSレジの性能が高く、処理が高速かつ正確」といった社会情勢が関係しています。
キャッシュレス決済の内訳
日本ではキャッシュレス決済のうち圧倒的にクレジットカード決済が多く、次いで電子マネー、デビットカードとなっています。
キャッシュレス化の展望
日本のキャッシュレス化は世界と比較すると遅れてはいるものの、着実に進行しています。
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2008年時点ではキャッシュレス決済比率は11.9%でしたが、2016年には20.0%に増加しており、8年間で約2倍になっています。
今後も日本のキャッシュレス化は進み続けていくと思われますが、その要因として挙げられるのが各企業の取り組みです。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックで増加するであろう訪日外国人旅行者への対応としてキャッシュレス化は急務となっており、現状クレジットカードが使えない店舗や飲食店は、決済端末の設置を進めないと、インバウンド需要を取りこぼすことになりかねない状況です。
また店舗の人手不足も深刻な問題となっており、現金を取り扱う際にかかる工数(レジ現金残高の確認等)を削減する必要性が出てきています。この工数の削減の施策として、キャッシュレス化が注目されています。
ECサイトにおける決済手段
それでは次に、ECサイトにおける決済手段について見ていきましょう。
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総務省の平成28年通信利用動向調査報告書(世帯編)によると、「クレジットカード」が63.0%で最も多く、次いで「コンビニ支払い」が35.1%、「代金引換」が32.0%、「銀行・郵便局のATMでの振込」が26.2%、「インターネット・モバイルバンキングによる振込」が15.1%となっています。
ECサイトではキャッシュレス決済が主流になっているものの、依然として「コンビニ支払い」や「代金引換」といったオフラインでの現金決済も選ばれています。
しかしそれぞれの増減傾向を見てみると、クレジットカードは利用率が安定していますが、代金引換前年に比べ約5%減少しています。
ECサイトにおいても、キャッシュレス化の傾向は進行しているようです。
また、以前からの決済手段であるクレジットカード決済や代金引換、コンビニ支払いなどの他に、新たな決済手段を採用するECサイトが増えてきました。
スマートフォンとの親和性が高い「キャリア決済」や、「PayPal」などの第三者決済サービス、「Apple Pay」や「LINE Pay」など、様々な企業が独自の決済サービスを提供しています。
⇒導入後、受注が10倍になった事例も!オンライン決済サービス『ペイパル』
「Amazonログイン&ペイメント」はAmazonのIDを持っていれば、Amazon以外のECサイトであっても、AmazonのIDを使って支払いができる利便性の高い決済手段です。楽天も「楽天ペイ」として同様のサービスをスタートしています。
今後は「ビットコイン決済」といった仮想通貨を使った決済も増えていくことでしょう。
ECサイト事業者が取り組むべきこと
ECサイトにとって、ユーザーの求める決済手段を用意しておくことは重要なポイントです。ユーザーが使いたい決済サービスを選べなかった場合、販売の機会を失うことにもなりかねません。
もしECサイトの「カゴ落ち」が目立つようであれば、決済方法を見直すだけでも改善するケースがあります。今一度自社のECサイトの決済方法について検討してみてはいかがでしょうか。
今後、政府がキャッシュレス化推進のために具体的な措置を導入することも考えられます。そうなれば日本のキャッシュレス化は急速に拡大するでしょう。
キャッシュレス化が進めば、ECサイトユーザーの求める決済手段もキャッシュレスへと移行していきます。
ECサイト事業者は、これから確実に進行していくキャッシュレス化社会に乗り遅れないようキャッシュレス化の動向に注目し、決済手段の見直しを図っていきましょう。
※1、2出典:キャッスレス・ビジョン 平成30年4月 経済産業省 商務・サービスグループ 消費・流通政策課
http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180411001/20180411001-1.pdf
※3出典:総務省 平成28年通信利用動向報告書
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/pdf/HR201600_001.pdf