スマートスピーカーがもたらすECサイトの未来とは?
近年、AIの飛躍的な進歩やビッグデータの活用により注目度が高まっているのが「スマートスピーカー」です。
現在それほど普及率は高くありませんが、スマートフォンのように我々の生活に深く浸透し、新たな市場を開拓する存在になるのではないかと期待されています。
今回はスマートスピーカーが普及することにより、人々の購買がどう変化し、EC業界にどのようなインパクトをもたらすのか探っていきましょう。
スマートスピーカーとは?
スマートスピーカーとは、「スピーカー」と「マイク」が一体となったIT機器で、マイクからユーザーの命令を音声で認識し、各種アプリケーションによって処理を行い、処理結果をスピーカーから音声でアウトプットするという機能を持っています。
この一連の処理で重要な役割を果たすのが「AIアシスタント」です。AIアシスタントはユーザーとアプリケーションとの橋渡しを担っています。
AIアシスタント
AIアシスタントとは、人工知能によってユーザーの話す言葉を認識し、その内容に応じてタスクを実行する音声対話型のインターフェイスで、Appleの「Siri」や、Googleの「Googleアシスタント」、Amazonの「Alexa」などが有名です。
元々はスマートフォンやタブレットなどの機器に搭載されることの多かったAIアシスタントですが、近年ではスマートスピーカーを始め、家電や自動車などにも搭載されています。
アプリケーション
スマートスピーカーはPCやスマートフォンなどのIT機器と同様に、OSとアプリケーションから構成されており、アプリケーションを追加していくことで、より便利に使うことができます。
現在スマートスピーカーに搭載されているアプリケーションは、アラーム機能や音楽再生、天気予報・ニュースの読み上げ、スケジューラーやToDo管理などにとどまっていますが、今後スマートスピーカーの普及が進めば、各分野の企業が新たなアプリケーションを開発することとなり、さらにスマートスピーカーの利便性は向上していくでしょう。
またスマートスピーカーがスマート家電のハブ役となり、一台のスマートスピーカーが全てのスマート家電を制御するようになる日が来るのもそう遠くはないはずです。
代表的なスマートスピーカー
現在様々なメーカーがスマートスピーカーを販売し、シェアを争っています。それぞれどのような特徴があるのか見ていきましょう。
Amazon「Echo」
2018年第1四半期の出荷台数1位を獲得したAmazonの「Echo」は43.6%のシェアを誇り、現在世界で最も売れているスマートスピーカーです。
Echoの最大の強みは、提携パートナーが提供するアプリケーションの豊富さです。このアプリケーションは「スキル」と呼ばれ、スキルをインストールすることでEchoの機能を拡充することができます。
日本における提携パートナーは2017年の発売時から100社を超えています。
例えば三菱UFJ銀行のスキルを使うと残高照会や入出金明細照会ができたり、各市町村のスキルを使ってゴミ集日を確認したり、NAVITIMEのスキルによって鉄道の乗換案内を調べることができます。
Google「Google Home」
2018年第1四半期の出荷台数2位はGoogleの「Google Home」で、26.5%のシェアを獲得し「Amazon Echo」と人気を二分する存在です。
Google Homeも、Echoのスキルに相当する拡張機能「Actions on Google」をインストールすることができます。数はEchoのスキルには及ばないものの、今後増えていくものと見られます。
その他のスマートスピーカー
2018年2月にアメリカを中心に発売されたAppleの「HomePod」は音質の良さが評価されており、今後日本での発売も期待されています。
LINEが発売した「Clova WAVE」は、LINEが独自に開発したAIアシスタント「Clova」を搭載し、音声でLINEのメッセージが送信できるほか、バッテリー駆動にも対応し、屋外に持ち出して使うことができます。
スマートスピーカーで何が変わるか?
スマートスピーカーが普及することによって、我々の生活はどのように変化するのでしょうか。
全検索の50%が音声検索になる
AIアシスタントの音声認識精度は日々向上しており、キーボード入力やフリック入力よりもスピーディーに検索できるため、音声検索の利用は増加傾向にあります。
アメリカの調査会社comScore社は、2020年までに全検索に占める音声検索の割合が50%に達すると予測しています。
スマートスピーカーの普及が進むと、ちょっとした調べ物であれば、PCやスマートフォンを取り出して検索するのではなく、スマートスピーカーに聞くという検索スタイルが主流になっていくでしょう。
所有者の72%はスマートスピーカーが生活の一部に
スマートフォンが世に出て数年足らずで我々の生活は一変し、今やスマートフォンなしの生活など考えられないという方も多いのではないでしょうか。
スマートスピーカーもそのような存在になる可能性は大いにあります。
スマートスピーカーの所有者を対象にした調査では、72%のユーザーが「スマートスピーカーは生活の一部になっている」と回答しています。
スマートスピーカーのアラームとともに目覚め、出かける前にニュースや天気などの情報を聞いたり、好きな音楽を聞いたりして朝の時間を過ごし、帰宅後は照明やエアコンなどのスマート家電の起動を指示するといったように、一度スマートスピーカーの快適さを体験すると、日々の生活と切り離せない存在となるでしょう。
ECサイトにもたらすインパクト
スマートスピーカーは人々の買い物のスタイルをも変容させる可能性を秘めています。
高価な商品や、じっくり吟味して購入を決めたいものなどは従来どおり、自分でECサイトを閲覧して購入するスタイルが継承されるでしょうが、安価なものや日用品の類は、わざわざECサイトで探さずとも、スマートスピーカーに最安値の商品を探してもらったほうがずっと楽です。
スマートスピーカーに欲しい商品を探してもらう時に、探し出した商品の詳細情報をスマートフォンに送信するよう頼めば、スマートフォン上で商品画像や商品説明を確認してから購入することができます。
「スキル」を開発するという戦略
スマートスピーカーの普及が進み、人々の購買スタイルが変容した場合、EC業界にも大きなインパクトがもたらされることになります。
Amazon Echoは「〇〇を注文して」と言えば、Amazon Prime対象商品を購入することができますし、Google HomeもGoogleがアメリカでサービス展開しているECサイト「Google Express」の商品であれば注文することができます。
いずれにしても自社の傘下にあるECサイトからの購入をサジェストするのは当然の成り行きです。
その他のECサイトがスマートスピーカー経由で注文を受けるには?
すでにサントリーや東急ハンズ、資生堂などがAmazon Echoの「スキル」を提供しています。
現状では「スキル」から直接商品を購入することはできず、お役立ち情報やイベント情報の提供にとどまっており、ブランディングを目的としたコンテンツが大半を占めています。
まとめ
今後Amazonが、外部のECサイトの「スキル」を解禁するかは分かりませんが、スマートスピーカー自体がまだ生まれたばかりの新しいプラットフォームです。メーカー各社が自由度の高い新たなスマートスピーカーを販売するかも知れません。
EC事業者は今後のスマートスピーカーの動向に注目し、新たなビジネスチャンスを逃さぬよう、今から「スキル」や「Actions on Google」などのアプリケーション開発に着手してみてはいかがでしょうか。