アパレル市場に未来はあるのか?【2018年版】
縮小傾向にあるアパレル市場を生き抜くには「変化」に対応していくことが重要であり、ユーザーの生活様式、テクノロジーの進歩、越境ECの盛況といった変化に対応することが、アパレル業界で勝ち残るポイントとなります。
今回は最新の市場動向をもとに、改めてアパレル市場の未来について考えていきます。
最新のアパレル市場動向
進行する二極化
※1
経済産業省の調べによると、百貨店の衣料品販売額はピークの1991年以降下がり続けており、今後も下降傾向は続くと思われます。
一方、百貨店と総合スーパーを除いた「織物・衣類・身の回り品小売業」の販売額は2009年に下げ止まり、その後は徐々にプラス成長を続けています。※1
また矢野経済研究所の調べによると、百貨店と量販店が売上を落としているかわりに、専門店や通販は好調を続けているとの結果が出ています。※2
つまり、百貨店と量販店の低迷がアパレル市場全体の足を引っ張っている一方で、それ以外の専門店や通販がアパレル市場全体を下支えしているという二極化の構図となっているのです。
専門店の状況
好調を続けている専門店の実情は、大手企業のユニクロ、しまむら、アダストリア等が売上を伸ばしている一方で、中小企業は苦戦を強いられており、ここでも二極化の構図が見られます。
通販の状況
ネット系通販企業が好調を維持するものの、従来のカタログを主媒体とする総合系通販企業は厳しい状況が続いています。ここにも二極化が現れており、アパレル業界の競争の厳しさが伺えます。
ECにおけるアパレル市場
それでは次に、ECにおけるアパレル市場について詳しく見ていきましょう。
対前年比7.6%アップ
※3
経済産業省の調べによると、衣類・装飾雑貨等の2017年のBtoC-EC市場規模は1兆6,454億円、対前年比で7.6%上昇しました。
物販系BtoC-EC市場におけるアパレル市場は、食料品や生活家電・AV機器等といった人気カテゴリを抑え、最大の市場規模を誇ります。
また成長率に関しても、雑貨・家具等の9.8%、事務用品・文房具の8.2%に次いで、3番目に高い数値です。※3
EC化率0.61ポイントアップ
衣類・装飾雑貨等のEC化率は2016年の10.93%から、2017年には11.54%となり、0.61ポイント上昇しています。しかし事務用品・文房具の37.38%、生活家電・AV機器等の30.18%と比較すると、アパレル関連のEC化率はまだまだ低水準にあります。※3
ECにおけるアパレル関連は、現時点で最大の市場規模と高い成長率を誇りながらも、EC化率が低いという特徴があり、EC化が進めば今後も成長の見込めるカテゴリであると言えるでしょう。
ダントツのスマートフォン比率
アパレル関連のもう一つの特徴として、スマートフォン経由での購入の割合が高いことが挙げられます。
アパレル関連のスマートフォン比率は50%強と推定されており、次いで書籍等、化粧品等、雑貨・家具等が約35%となっているため、全カテゴリの中でも突出して高い数値です。
この要因としては、女性や若年層といったアパレル関連のコアユーザー層がスマートフォンを通じて購入する機会が多いためと考えられます。
アパレル市場で勝ち残るポイント
これまで見てきたように、国内のアパレル市場はパイの奪い合いの様相を呈し、勝ち組と負け組の二極化が進行しています。
アパレル市場で勝ち残るポイントを、勝ち組となっている企業の施策から探ってみましょう。
オムニチャネルの推進
実店舗を有する企業は、オムニチャネルの推進を図ってECでの売上シェアを伸ばすことが先決です。
ユニクロでは実店舗で採寸して注文を受け、ネット通販専用の倉庫から在庫商品をピックアップする仕組みを導入しています。採寸データをデータベース化することで、二回目以降の購入時にはネットから自分にピッタリのサイズの商品を注文することができます。
またGUでは、実店舗のショッピングカートの押手部分にセンサ付きの液晶モニタを設置し、店内の商品をセンサにかざすと、商品の詳細情報を閲覧できたり、店舗に在庫の無いサイズや色柄の商品であっても、通販在庫からピックアップできたりするシステムを導入しています。
ZOZOSUITの革命
アパレル系ECモールで圧倒的なシェアを誇るスタートトゥデイ(ZOZOTOWN)は「ツケ払い」や「返品送料一律200円」など、ユーザーのニーズに沿ったサービスを展開してきました。
そして「ZOZOSUIT」という革新的なサービスを開始して話題となっています。ZOZOSUITという採寸用ボディスーツを無料で配布し、スマートフォンのアプリと連動することで身体のあらゆるサイズを計測してくれるというものです。
計測後は自分のサイズにジャストフィットのオーダーシャツやジーンズなどを注文することができます。
これはアパレル関連の通販における最大のネックであった「サイズの問題」に真っ向から取り組んだ革命的な施策といえるでしょう。
まとめ
従来、アパレル関連は通販に向かないと言われていた時代がありました。試着ができない、素材や色味が確認できない、サイズが合うか分からないという通販にとって不利な条件が揃っていたためです。
そのような不利な条件が揃っていたからこそ、それらを克服しようと様々なイノベーションが生まれ、現在ではEC市場で最も規模の大きい商品ジャンルにまで成長しました。
新たなイノベーションが誕生する余地はまだ残っています。
サイズの問題で言えば、アパレル系ECサイト向けのオンラインフィッティングシステム『unisize』などの新しいソリューションが開発されており、将来的にはあらゆるユーザーが自身の採寸データを保有し、複数のECサイトで一元的に採寸データを使って買い物ができるようになるでしょう。
またスマートフォンとの連携も見逃せません。スタートトゥデイではファッションコーディネートアプリ『WEAR』と『ZOZOTOWN』を連携させて顧客の囲い込みに成功しています。
新たなイノベーションを生み出し続け、アパレル関連のEC化率が上がっていけば、アパレル市場の未来も明るいと言えるのではないでしょうか。
※1参考:経済産業省 百貨店 衣料品販売の低迷について 2017年2月
http://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/pdf/h2amini072j.pdf
※2参考:矢野経済研究所
https://www.yano.co.jp/press/download.php/001754
※3参考:経済産業省 平成29年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)
http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180425001/20180425001-2.pdf