EC事業者も無視できない、省エネ法の改定と報告の義務化とは?
省エネ法の改正を視野に入れた検討が行われている事がニュースになりました。
この改正により、EC事業者も対象になる可能性がでてきました。経済産業省の平成28年のレポートによると、BtoCのEC市場規模は15兆円を超えていると報告されており、14年後には2.3倍の32兆円を超えると予測されております。さらに物販を中心としたEC事業はその市場規模の約半数を占めており、アマゾンをはじめとしたECサイトのサービスは近年さらに多様化、ECサイトにおけるフロント機能や多彩な決済方法をはじめ数々のEC周辺サービスが増えています。特に配送サービスにおいては当日配送や深夜に頼んでも翌日に届いたりと、大変便利な世の中になりました。ですがそのサービス向上の背景には宅配業者への長時間勤務や人員不足といった状況もございます。そのような様々な背景・状況から、経済産業省は省エネ法の改正を検討しはじめたのではないでしょうか。
※経済産業省が発表した【BtoC EC市場の成長予測】より抜粋
そもそも省エネ法とは?
正式名称は「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」という法律です。エネルギー使用の合理化を目的とし、輸送車のガソリン消費など二酸化炭素の排出抑制のために政府が定めた法律になります。現在は年間輸送量が年間3,000万tkm(トンキロメーター)以上の荷主が対象になっています。3,000万tkm(トンキロメーター)というとあまりイメージが湧きませんが、輸送物の重量に輸送距離を乗じた貨物ごとの値の合計単位となります。仮に10tの荷物を東京→大阪間の600kmを輸送したりとすると、6,000tkm(トンキロメーター)となり、東京→大阪間を年間で2,500回往復すると対象となる、ということになります。地方で製造した商品を東京倉庫で大量に保管する大手メーカーなどは対象になる可能性が高いと思われます。故意に取り組まなかった場合は罰則として最悪罰金などの法的措置がとられることになっています。
対象になると何を計画・報告する必要があるのか
・貨物の輸送量届出書
年度の輸送量が3,000万トンキロ以上になった場合に提出
・計画書
貨物の輸送に対するエネルギー使用の合理化の目標達成のために計画書を作成
・定期報告書
貨物の輸送に対するエネルギー使用量の情報を記載
上記を年に1回提出することが義務となります。さらに定期報告書の内容に基づき、判断基準の遵守の状況や、エネルギー消費原単位の推移等について報告徴収や立入検査が行われる場合もあり、エネルギー使用の合理化状況が著しく不十分であると認められた場合には、勧告、公表、命令が行われる場合もあります。もちろんこれは、現時点での必要事項なので、改正された後はEC事業者独自の計画や報告義務などは発生するかもしれません。
今まではEC事業者は対象になっていなかった
今までEC事業者は発送した段階で商品所有権が消費者に移るため、配送中の段階で荷主としての対象になっていなかったのですが、EC市場の拡大により飛躍的にトラックなどでの配送量が増加ました。そこで政府は省エネ対策として、「配送中の所有権がないEC事業者も対象にせざるを得ない」という判断だと思われます。3,000万tkm(トンキロメーター)という基準があるので、ECで扱っている重量のある大きな商材、例えば家具・インテリア事業者や、小口でも超大量配送を行っている小売業者などはこちらの対象になる可能性があるようです。
CtoCのサービスを展開しているオークション会社はどうなの?
スマホアプリなどで好調なオークション(CtoC)サービスを展開している企業に対しては、所有権は商品を出品している出品者→落札者のため対象外となります。さらに個人も対象外です。仮に年間3000万トンキロ以上出荷をしているオークションの達人がいたとしても、個人は対象になりません。あくまで対象は法人となります。
早ければ今年秋の臨時国会で省エネ法改正があるかも!?
今年秋の臨時国会での省エネ法とは改正で見直し作業を進めているようです。もしこの改正が可決されれば、現在売上規模の大きなEC事業者は対象になる可能性があります。
対象になった場合はエネルギー使用量の報告や抑制に応じる必要があるため、企業としての対策が必要となります。
ECのサービスが充実してユーザーにとっては非常な世の中ですし、今年以降もEC市場規模は拡大しております。その点配送における出荷量が増え宅配事業者も長時間勤務などの問題がありつつも、環境にも良くはないということで政府が対策を進めているのも事実です。EC事業者としても様々な課題・対策が必要となってくると思われます。