キャッシュレス・消費者還元事業とは!?
2019年10月よりスタートする『キャッシュレス・消費者還元事業』は、中小・小規模事業者のキャッシュレス決済導入を促進すると同時に、消費者にキャッシュレス決済の使用を促し、さらに需要拡大の効果も期待されています。
今回は『キャッシュレス・消費者還元事業』にスポットを当て、本事業がEC事業者にどのような影響を与え、どんなメリットをもたらすかご紹介します。
キャッシュレス・消費者還元事業とは?
経済産業省が実施する『キャッシュレス・消費者還元事業』は、2019年10月1日の消費税率引上げに伴い、需要平準化対策として、キャッシュレス対応による生産性向上や消費者の利便性向上の観点も含め消費税率引上げ後の9ヵ月間に限り、中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元を支援する事業です。※1
実施期間
実施期間は2019年10月1日から2020年6月30日までです。
2019年5月より中小店舗の登録が始まっており、7月下旬に対象店舗が公表される予定です。そして9月より対象店舗による統一ポスター等の掲示が開始予定となっています。※1
対象となる決済手段
クレジットカードやデビットカード、電子マネー、QRコードなど、一般的な購買に繰り返し利用できる電子的決済手段(キャッシュレス決済)が対象です。
また、日本円でのチャージが可能な決済サービスや、日本の金融機関の口座を利用する決済サービスであること(主として日本に居住する者を対象とする決済サービスを提供すること)が条件となっています。※1
キャッシュレス・消費者還元事業がもたらす効果
『キャッシュレス・消費者還元事業』は、消費者と中小・小規模事業者、そしてキャッシュレス決済を提供する決済事業者の三者にメリットをもたらす事業になると期待されています。
三者にどのようなメリットがあるのか詳しく見ていきましょう。
消費者のメリット
2019年10月より、対象の店舗(実店舗・ECサイト)でキャッシュレス決済手段を用いて支払いを行うと、決済額に対してポイントが還元されます。
還元ポイントは5%(フランチャイズチェーンで購入した場合は2%)です。
ただし還元されるのはあくまでもポイントであり、キャッシュバックや現金還元ではない点には注意しましょう。
キャッシュレス決済事業者のメリット
本事業におけるキャッシュレス決済事業者にはA型決済事業者(キャッシュレス発行事業者)とB型決済事業者(キャッシュレス加盟店支援事業者)、そして準B型決済事業者( キャッシュレス加盟店管理事業者 )の3種類があります。
【A型決済事業者(キャッシュレス発行事業者)】
キャッシュレス決済手段を直接的に提供する事業者のことで、キャッシュレス決済を利用して対象店舗で購入した消費者にポイント還元を実施する事業者を指します。
【B型決済事業者(キャッシュレス加盟店支援事業者)】
キャッシュレス決済の導入を支援する事業者のことです。本事業に参加を希望する中小・小規模事業者の登録申請を受け付け、補助金事務局に登録を行い、必要に応じてキャッシュレス決済手段も提供します。
【準B型決済事業者( キャッシュレス加盟店管理事業者 )】
キャッシュレス決済サービスを提供することを主たる事業としていないものの、B型決済事業者と連携し、ショッピングモール等の自社の関連商業施設等のテナント等とのみ加盟店契約を締結し、立替払い等を行う事業者を指します。
これらのキャッシュレス決済事業者は、消費者へのポイント還元補助や加盟店手数料の補助、決済端末の導入費の補助、事務経費の補助などを受けたりすることができます。※1
キャッシュレス決済事業者にとっては、各種補助金を受けながら自社のキャッシュレス決済の加盟店を拡大するチャンスと言えましょう。
中小・小規模事業者のメリット
補助の対象となる中小・小規模事業者の定義は業種別に細かく定められており、ECサイトやネットショップが該当する小売業の場合、「資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人事業主」となっています。
中小・小規模事業者として認められると、キャッシュレス決済の決済端末を無料で導入することが可能です。
また期間中の決済手数料(加盟店手数料)は3.25%以下と決められており、さらに国がその1/3を補助してくれるので、実質2.17%という低利率でキャッシュレス決済を導入できます。
期間後は料率が上がる懸念もありますが、期間後の料率は加盟店契約前に事前開示する決まりになっているので安心です。※1
その他のメリットとしては、ポイント還元による集客力のアップや、レジ締めなどの現金を扱う業務の削減などが挙げられます。
EC事業者から見たキャッシュレス・消費者還元事業
ネットショップやECサイト事業者であっても、上記の中小・小規模事業者の定義に合致していれば本事業に参加することができます。
消費税率引き上げによって需要の落ち込みが懸念されますが、本事業をうまく活用して新規顧客を獲得することもできるでしょう。
⇒ECサイト事業者は『キャッシュレス化』にどう対処すべきか?
EC事業者向け決済サービス
事務局のサイトにおいて、キャッシュレス決済事業者が提供する「加盟店向け決済サービス」が閲覧できるので、自社の事業やサイトに合わせた決済サービスを選べるようになっています。
「EC事業向け」のキャッシュレス決済事業者は、現在5社(Paidy、ASJ、ソニーペイメントサービス、ヤマトフィナンシャル、りそな決済サービス)が登録されています。
また仮登録を行っている事業者が他に4社(GMOイプシロン、SMBC GMO PAYMENT、ペイジェント、楽天銀行)あり、主要なEC決済代行会社が軒を連ねている状況です。※1
この機会に、現在導入している決済サービスや決済代行会社が本事業に参加しているかどうか確認しておきましょう。
対象のEC事業者はこの機会を逃さないように
これからキャッシュレス決済手段を導入しようとしているEC事業者は、格安な決済手数料でスタートできるチャンスです。本事業終了後の料率は公開する決まりになっているので、契約時には終了後の料率を必ずチェックするようにしましょう。
中小・小規模事業者にとってはメリットの多い支援事業なので、興味のある方は事務局のサイトで実施要領などの詳細確認や、各種問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。
なお、経済産業省は2025年までに民間最終消費支出に占めるキャッシュレス決済比率40%を実現することを目標としており、我が国のキャッシュレス化が大幅に推進される可能性があります。※2
現状クレジットカードのみの対応の場合は、これを機に電子マネー等の他のキャッシュレス決済手段の導入も視野に入れ、キャッシュレス化の波に乗り遅れないようにしましょう。
※出典1:キャッシュレス・消費者還元事
https://cashless.go.jp/
※出典2:経済産業省 キャッシュレス・ビジョン
https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180411001/20180411001-2.pdf