株式会社ダルトンが実施する新規とリピーターを意識したオムニチャネル施策とは?
BtoCパッケージ , visumo , Sechstant , オムニチャネル施策
1988年創業のインテリア雑貨メーカーである株式会社ダルトンは、誰もが使うあたり前に在る道具、身の回りのひとつひとつを今よりもっと面白くすることで「道具を愉しむ、もうひとつの豊かさ」を提案しています。
ファニチャー、ハウスウェア、ガーデンツール、キッチンツール、ステーショナリー等、生活にまつわるあらゆるラインナップを展開し、ダルトン直営店ではその独自の世界を存分に味わうことができます。
そんな株式会社ダルトンに、今回は事業全体におけるECの目的や背景、運用、今後の展望について株式会社ダルトン 齋藤 理紗さんに聞く。
基本情報
<社 名>
株式会社ダルトン
<設立年月日>
1988年7月14日
<事業内容>
ファッション、インテリア雑貨等の輸入・卸売業務全般
<資本金>
1,000万円
<所在地>
本社:〒420-0814 静岡県静岡市葵区長沼南11-5
異国情緒あふれる雰囲気の空間を作り出せる商品
――最初に、ダルトンさんの事業や商品について教えてください。
齋藤:弊社が取り扱っている商品としては、インテリア雑貨というところでファニチャーやハウスウェア、キッチン雑貨、ガーデニンググッズ、ステーショナリー文房具などの幅広いインテリアグッズの輸入・卸売業務全般を行っております。
今後は少しずつアパレル商品を増やそうと考えております。直営店ではすでにアパレル商品の販売を行っておりますが、オンラインショップでも少しずつ展開していく予定です。
基本的にはユニセックスで少し男性よりの商品展開をしており、種類としては服だけでなくキャップやハットも販売していく予定です。
また商品のコンセプトとしては、海外や異国情緒あふれる雰囲気のある空間を作り出せる商品を基本的に仕入れるというのが共通しているポイントです。
具体的に言うと、海外では一般的に生活の中で使われている商品でも、まだ日本では取り扱っていないような商品を弊社では取り入れていることが多く、基本的には便利で使いやすい商品というよりは、生活や自分の気持ちを豊かにしてくれる商品を取り扱っています。
お客様の意識を変えて認知度を高める
――こだわり溢れる商品ですね!その中でECサイトを立ち上げた目的は何だったのでしょうか?
齋藤:立ち上げ当初の目的としては弊社の認知度を高めることでした。
弊社はもともと卸事業をメインで行ってきたため、昔は会社名や日本のメーカーであることもあまり言わずに長年やってきました。弊社の商品は全国いろんな小売店で取り扱ってもらえていますが、お客様はその商品をダルトンの商品と認識して必ずしも使っているわけではありません。ダルトンという雑貨屋・メーカーがあること知ってもらうために自社で商品をしっかり販売していかなければというところでECを立ち上げました。
お客様にダルトンというメーカーを認知してもらうというところで、2016年には会社として直営店を増やしていく方針のもと、自由が丘店の立ち上げを行い、同時期にオンラインショップの立ち上げとコーポレートサイトのリニューアルを一気に行いました。
――ECサイトの立ち上げ当初からecbeingをお使いだったのでしょうか?
齋藤:はい。ECサイトを立ち上げることになった時、展示会でいくつかの会社様を検討させて頂いたのですが、その中でもecbeingさんの実績はもちろんご担当者の熱量や人柄に惹かれご依頼しました。
――実際ecbeingに依頼していかがでしょうか?
齋藤:ecbeingさんには弊社の認知を広げるため、常に親身に考えてくださっている印象があります。
特にご担当者には立ち上げ当初、弊社の倉庫まで来ていただき、現状をいろいろとみて頂きました。当時、弊社がアナログな会社であることや考えている以上に認知がないところなどの問題点を一緒に考え提案を頂きました。
そういった意味ですとecbeingさんは依頼をしている外注というよりは、社内の違う部署の方というぐらいの距離感でとてもやり易かったです。
弊社にはEC専門の部署があるわけではなく、チームでECを運用していますので専門的な知識のある人間が常にいる状態ではありませんでした。
そのため困ったことがあれば、ecbeingさんにすぐ相談できるところも助かっています。
なにより、弊社に直営店があるという強みを理解した上でご提案していただき、ECの売上だけでなく会社全体の売上を意識した考え方をしていただけるところに信頼関係を感じています。
商品に対する想いや見せ方で他社と差別化
――ECサイトを立ち上げ時にこだわった点は?
齋藤:商品の見せ方にはこだわっています。
ECサイトを立ち上げる際、初めに議題に上がったのが、どうやって弊社の商品を取り扱っている他社と差別化をしていくかというところでした。
もともと卸事業がメインのため、すでにWebに限らず弊社の商品を取り扱っている会社は多数ありました。その中で自社だからこそできることを考えた時に、「購入意欲を高める商品のビジュアル」「商品に対するメーカーだからこそ言える想い」「使ってほしい空間」などをサイト内に言葉や写真で伝えていけるのではと考え、力を入れていきました。
その一環で商品画像は年に2回行われるカタログ撮影などで一緒に撮っていただき掲載しています。
カタログ撮影の写真は直営店のチラシやポスターを作成する時にも使用しますし、今後はその撮影の回数も増やしていこうという動きにもなっています。
また、ここ一年ぐらいでビンテージ商品や古書を取り扱うようになりました。古書は一点物を組み合わせてセット販売を行っています。
もともと、弊社のカタログ撮影の時に、よくインテリアとして古書を使用していました。取引先お客様からのニーズがとても高いこともあり、海外の方から何千冊と仕入れるようになりました。
ニーズだけでなく、ダルトンのサイトを見に来たお客様に一点物の商品を提示することで、一期一会の出会いを体験してもらいたいという想いもあります。
直営店では特にそういった体験が購入に繋がるポイントになっているため、ECサイトでもそういった体験要素を取り入れたいと考え、販売を始めました。
ちなみに、古書のセット売りはなかなか他社でもやっていない売り方で、古書を取り扱っている専門店でも金額が高い場合があります。弊社の場合、まとめて海外から仕入れているため、そういった専門店と比べると安くなります。
オンラインとオフラインの連携でお客様に情報をお届け
――サイト運用において力を入れていることはなんでしょうか?
齋藤:今いるお客様に適切な情報を届けるという部分に力を入れています。
イベントやセールを行うことになった時、店舗だとそれを伝えるツールがないというところから弊社はもともとスタートしています。常連のお客様のことはスタッフも認識していましたが、データとしては一切持っておらず、お客様に対するアプローチ手段がない待ちの状態が続いていました。そのため、まずはお客様に自分たちの情報をしっかり伝えていきましょう、というところからサイト運用はスタートしています。
――具体的にどのようなことをしたのでしょうか?
齋藤:会員統合、店舗連携を含めたオムニチャネルを進めていきました。
まず2017年に会員を統合させて、そこからECサイト、直営店で共通で使えるポイントカードの機能の付いたアプリを導入しました。アプリ上では店舗や商品の情報、オンラインショップ、お知らせといったものを閲覧できるようにしました。
――オムニチャネルを進めていく上での苦労はどのようなことがありましたでしょうか?
齋藤:社内の認識を合わせていくところは時間をかけて進めていきました。
直営店の店長やスタッフたちが業務の中で、会員証となるアプリを使うということに慣れていなかったため、まずはお客様にどのように会員登録を促すか、メリットをどのように伝えるか、という部分を、接客時に疑問を持たずに案内してもらえるよう、繰り返しすり合わせを行いました。
会社全体で取り組んでいることとはいえ、EC事業自体は新たな取り組みでしたので、最初はそれぞれの部署でも抵抗があったかとは思います。
ただし、弊社の中での考えとしてECも直営店も一緒で一店舗として見ており、みんなが共通の認識として分けて考えちゃだめだよねということが、頭のどこかにはあるような状態でしたので苦労はしましたがやり易かったです。
――社内の認識を合わせた後、他にどのようなお取り組みをされたのでしょうか?
齋藤:年間を通してイベントやフェアなど、直営店とECサイトでの連動企画を行っています。
年に4回程、合同イベントがあり、直営店に行ってもECサイトに行っても基本的には同じサービスを受けられるようにしています。
イベントの内容は直営店のイベント担当者とすり合わせ、例えば、直営店側はイベント期間中の購入者に対してステッカーを渡し、ECサイトでは別の特典を付けるなど、店舗とECサイトで全く同じイベントをやることもあれば、差別化してイベントを行うこともあります。
――様々なお取り組みをされている中で社内から反響などはありましたでしょうか?
齋藤:現在ECサイト上の商品ページでは、店舗在庫の有無を表示させています。そのため、オンラインショップを見て在庫がなかった時に店舗に問い合わせをしてくれるお客様が増えているとの声がすごく増えている実感があります。
今までは、弊社にはどんな商品があって、どこにその商品が売っているのか、お客様が一括して確認出来る場所がありませんでした。それがECサイトを通して、お客様側からも簡単に閲覧していただけるようになりました。
また、お客様からは「この商品と似たものが欲しい」などの気軽な問い合わせも来ており、お客様からの生の声が聞き取りやすい環境ができています。
実はそういったお客様からの要望が店舗に今までどれくらいあったのかがわかりませんでした。ただECサイトの場合はデータとしてどんどんたまっていくので、お客様の要望や、それに対する具体的な件数などのデータを社内に共有しやすくなりました。
店舗とECの両方に購入きっかけを作る
――現在の課題と今後の展望について教えてください。
齋藤:やるべきことはたくさんあり、新規会員数を増やすのもその一つだと感じています。
店舗では新規来店も多いので、新規ユーザーを獲得しやすい部分です。
新規獲得には、それなりに広告費も掛かるため、まずは直営店に来店されるお客様を出来るだけ会員化させることに注力していこうと考えています。
そのため会員登録を促す施策として、直営店で会員登録してくれた方にオリジナルステッカーをプレゼントという特典施策を一定期間行っております。
また別のタイミングでは、新規登録でポイントプレゼントといった特典施策を行い、ステッカーの時とポイントの時とどっちが会員登録してもらいやすいかをABテストで検証したいと考えています
こういった形で新規会員数を増やしていくと、次の課題としてEC購入会員数を増やしていくことに意識が行きます。
現状、会員登録の際に、お客様にアプリをダウンロードしてもらっており、ツールを通してお客様と繋がりを持てるので、アプリPUSH通知や、メルマガ経由でECサイトへ誘導しています。
定期的に、ECサイト限定で使えるクーポン発行などを行い、主に店舗を利用しているお客様にも、オンラインを利用してもらえるきっかけを作っています。
クーポン発行などの特典でも、オンラインを利用してくれるきっかけにはなりますが、それだけではリピートをさせていくことが難しいため、今後はオンライン限定商品の販売を検討しています。オンラインとオフラインの両方を行き来してもらうためには、商品の限定感や特別感を楽しんでもらうような売り方が必要になると考えており、そういった売り方を盛り込んでいけたらと考えています。
――ちなみに限定商品はどういった商品でしょうか?
齋藤:アパレルを展開していくというお話を冒頭にしたかと思いますが、アパレル系のものでECサイトだけで購入できるシリーズものを作っていこうと考えています。
もともとダルトンを好いていてくれる方がECサイトでは買わないということは、たとえECサイトでセールやクーポン発行などを行っても買わない可能性が十分にあるため、そこでしか買えない商品を直営店・ECサイトどちらにも作っておくということを今後も続けていきたいと考えています。
――機能的な面で、今後より取り組んでいきたいことはなんでしょうか?
齋藤:SNSの運用はもっと力を入れていきたいと考えています。
集客やプロモーションの新しい軸として、インスタ広告を新しいユーザー層獲得のために進めてみたところ親和性が高いことがわかりました。弊社の商品は写真やビジュアルで見せるのが一番伝わりやすいというのもあり、最近はSNSを使った広告や各直営店で持っているSNSアカウントも強化していきたいと考えています。
直営店のSNSアカウントはお店のスタッフが運用しており、運用方法についての説明会を開いています。具体的にはSNS運用に関することを社内で話し合う時間を設け、実際に投稿したものなどに対して定期的にアドバイスを行い、もっとクオリティを上げていけるような動きを進めています。
大阪の直営店『DULTON FACTORY SERVICE OSAKA』というお店でもSNSに力を入れており、お客様の中には投稿を見て来店される方が非常に多く、リピートにも繋がっております。
そのため、他の直営店でもSNSで発信してリピーターが増えるような仕組みを作っていきたいと考えています。
またecbeingさんのvisumoを使用して、サイト内にお客様のInstagram投稿を見せていきたいと考えています。お客様の中には弊社で購入した商品だけでなく、実店舗の写真も撮影してInstagramに投稿している方もいらっしゃいます。
スタッフが写真を撮って投稿したものとは違い、お客様が初めてお店に来て感じてくれているわくわく感がすごく伝わってくる写真なのでそういったものもサイト内で見せていき、見たユーザーに「実際に店舗にも行ってみたい」と思ってもらえるような仕組みを作りたいと考えています。
――ありがとうございました。では最後にこれからECをスタートする、またはリニューアルする企業に向けてアドバイスや注意点をお願いします。
齋藤:社内の方たちへの認識合わせには時間をかけたほうがいいと思います。
結局ECサイトを一部署の力だけで運用することは難しく、店舗スタッフや出荷担当、営業など違う部署との連携が必要になってきます。そのためまずは時間をかけてでも理解を深めてもらうというところは、凄く大事だと感じています。
ECサイトを立ち上げる前は、法人受けの出荷がメインでしたので、BtoCのお客様に対する発送に関してはそもそも出荷数が出せるのかなど、前提の話も含め何回も物流とすり合わせをしました。結果1、2年かけて土台を作ったので違う部署の人でもECのことを意識してもらえるようになりました。
またサイトの運営が始まると、お客様からの意見が集約しやすい部署ではあるので、それをどう形にして改善していくかというところに気を付けていました。
例えばお客様からクレームが来た時に内容をスピーディーに対応することはもちろんですが、それに加え、クレームとなった経緯の洗い出し、原因となる部分をひとつひとつ細かく改善していくことで、クレームを格段に減らすことが出来るようになりました。自分たちだけでは気づけなかったことを、お客様の1つの意見を通じて気づけたことはすごく大事にしています。
――
株式会社ダルトン
齋藤 理紗(さいとう りさ)
・「ダルトン公式オンラインショップ」
(https://www.dulton.jp/onlineshop/)
●取材・文:塩見駿介