JAタウン 「Google Analytics」では見られない“データ分析”で課題を把握、効果的な施策でF2転換につなげる
JA全農が運営する日本最大級の国産農畜産物の産地直送通販サイト「JAタウン」では、現在約120ショップ以上が出店し、安心・安全で新鮮な美味しい野菜や果物、お肉の販売を行っています。
今回は、モール型ECサイトJAタウンで活用されているデータ分析ツール“Sechstant”の導入に至った背景や課題、データ分析や分析に基づいたマーケティング施策の事例について詳しくお伺いしました。これからデータを活用してマーケティングをしていきたい事業者様必見の記事となっています。
JA全農が運営する日本最大級の国産農畜産物の産地直送通販サイト「JAタウン」では、現在約120ショップ以上が出店し、安心・安全で新鮮な美味しい野菜や果物、お肉の販売を行っています。
今回は、モール型ECサイトJAタウンで活用されているデータ分析ツール“Sechstant”の導入に至った背景や課題、データ分析や分析に基づいたマーケティング施策の事例について詳しくお伺いしました。
これからデータを活用してマーケティングをしていきたい事業者様必見の記事となっています。
全農ECソリューションズ株式会社 基本情報
社 名 | 全農ECソリューションズ株式会社 |
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設 立 | 平成30年6月8日 |
事業内容 | もっと近くに美味しい日本 「JAタウン」の運用業務 あなたの知らない日本のおいしいを 「JAのふるさと納税」の運用業務 ※全国農業協同組合連合会より業務委託を受け、運用業務を行っております。 食と農のクラウドファンディング 「AGRISSIVE!」の運営 |
資本金 | 20,000,000円 |
所在地 | 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-15-1 渋谷クロスタワー |
全農ECソリューションズ株式会社の沿革について教えてください。
金木: 食品業界でEC化率がまだまだ低い中、全農は先頭だってEC事業を切り開いていこうという目的のもと国産農畜産物の通販サイト「JAタウン」を立ち上げました。しかし、ECサイトを運営していく中で、やはりシステム開発や保守、運用や商品開拓、販売企画、ページの作成など、ECの知識を持った人材の必要性を感じました。そこで、以前からシステムサポートをお願いしていたecbeingさんにご相談させていただき、2018年に共同で全農ECソリューションズ株式会社を立ち上げました。「JAタウン」では2008年にECパッケージシステム“ecbeing”を導入しているので、ecbeingさんとはもう既に10年以上のお付き合いになります。
モール型のECサイト「JAタウン」について教えてください。
泉: 今回分析ツール“Sechstant”を導入したJAタウンは、全国のJAグループや全農の子会社に出店していただいている「モール型のECサイト」になります。現在は北海道から沖縄まで約120ショップが出店し、国産農畜産物や地域の特産品を産地直送でお届けしています。地域振興や生産者の所得の向上などを目指しており、全農の中でも特に注目されている事業になります。
> あなたの知らない日本のおいしいを「JAタウン」
金木: JAタウンに出店していただくと、モールならではの“集客”の強さを生かせることは勿論、その上で配送連携やコールセンターでの対応、マーケティング支援、キャンペーン施策なども行っていますので、出店される各ショップは商品の企画・販売や、お客様対応、商品の出荷に専念していただけます。
そんなサポートの厚さを各ショップからご好評いただいています。
どんな方がJAタウンのサイトを利用されているのですか?
泉: JAタウンの扱っている農畜産物は価格帯がスーパーよりも高いので、年齢層の高い方に利用されることが多いです。また、お中元やお歳暮などの“ギフト”としても利用していただいていますし、昨年からは新型コロナウイルスの影響で「巣ごもり需要」が増えて “普段使い“として利用していただくことも増えました。
金木: また、“食”に関心がある人だけでなく、“産地”を応援したいという方にも利用していただいています。一昨年、台風で傷ついた長野県産のリンゴの応援販売を行ったところ、「応援しています!」という温かいコメントを沢山いただきました。
JAタウンで取り組んでいる施策について教えてください。
泉: JAタウンには毎回違う商品をお届けする定期便「頒布会」のサービスがあります。
今まではショップごとに頒布会の商品を用意していただき、販売をしていました。2020年はJAタウンのモール側が主導し、11月はAショップから”柑橘”を、12月はBショップから”別の柑橘”を、というような「ショップ横断型の頒布会」の企画・実行しました。
金木: その他にも、レビュー最適化ツール“ReviCo”を導入したり、ecbeingのグループ会社である株式会社AtoJに依頼してSEO対策を強化したりと様々な施策に取り組みました。
それでは、今日の本題である“オムニチャネル分析ツール「Sechstant」”についてお伺いさせてください。
web広告やEC、実店舗の顧客・購買データ、アクセスログを外部ストレージに蓄積、数値を可視化することで、これまで見えてこなかった総合的なマーケティング分析が簡単に可能。施策立案の最適化、売上向上に寄与いたします。
Sechstant導入の背景について教えてください。
泉: 導入したのは2019年の末で、導入からは1年半ほど経っています。
きっかけは、JAバンクのキャンペーン「結いの恵み」が発行しているギフトカードを使った注文がかなり多く、正確なデータ分析ができなかったことにあります。「結いの恵み」は、毎年数億円規模でギフトカードを発行していましたので、これを使ってJAタウンで商品を購入するお客様が沢山いらっしゃいました。しかし、「結いの恵み」を使って購入されたお客様の多くは、一度だけの注文で終わり、JAタウンのリピーターにはなかなかなっていただけませんでした。
そのため、Google AnalyticsやBackOfficeを使って、過去1年間で1回以上商品を購入した「アクティブユーザー」の分析を行おうとすると、データが「結いの恵み利用者」に影響されてしまい、きちんとした分析がほとんど出来ていませんでした。
具体的に説明すると、「結いの恵み利用者」を入れると「アクティブユーザーの総数」はかなり多くなるものの、「結いの恵み利用者」はリピート購入をほとんどしないので、全体で見たときに“F2転換率”や“平均注文回数”が極端に低くなってしまいます。また、「結いの恵みを使わずに商品を購入してくれた方の総数を正確に把握することもできませんでした。
金木: Google Analyticsや管理画面でも、時間をかければ一般ユーザーのみのデータを作成することは出来ると思いますが、かなり難易度が高く、時間もかかってしまうので、簡単にギフトユーザーのデータを除外し、一般ユーザーのみのデータを様々な軸で分析し、分かりやすく結果が見られるツールを検討し、Sechstantの導入にいたりました。
実際にSechstantを使ってみていかがですか?
課題の明確化
金木: Sechstantでギフトカードユーザーを除いたアクティブユーザーで分析が出来るようになってから、JAタウンのサイトでは、2度購入していただいたお客様は、比較的3度、4度と何度も購入していただいていることが分かりました。おかげで、課題は2回目の購入につなげること、つまり『F2転換率の向上』ということが明確化されました。
簡単にぱっと結果が見られるので非常に便利
泉: 導入したきっかけとしては、“ギフトカードユーザーのデータを除外したい”という大きな理由がありましたが、その他でもSechstantを導入して非常に便利になった点がいくつもあります。
JAタウンは約120ショップが出店しているモール型のサイトなので、各ショップの担当者から施策を考えるうえでモール全体の傾向を知りたいとのご要望をよくいただきます。 具体的には「今年はモール全体でどれくらい柑橘は売れているのか?」「今年から水産物の販売に力をいれたいが、昨年JAタウンではどれくらい水産物が売れたのか?」といったご質問をいただきます。このようなご質問をいただいたときに、Sechstantでは“日付”や“カテゴリ”でフィルターをかけるだけでぱっと数値が表示されるので非常に便利です。 Google Analyticsではモールサイト全体の売上は見られても、カテゴリごとの数値は全く出せなかったので、とても助かっています。
見やすい資料作りにも貢献、業務を効率化
金木: Sechstantではデータ分析した結果をTableauと連携して分かりやすい見た目のグラフや表で表示してくれるので、とても見やすい資料が作れるようになったと思っています。実は結構これは大事なポイントで、企業である以上、社内で上申する際や、お客様に見せるための紙の資料を作成することはどうしても必要になります。けれども、資料作りを頑張っても売上には直接繋がらないので、かける時間はなるべく短くしたいということも、どこの企業でも持っている悩みではないかと思います。Sechstantは、なるべく分かりやすく、かつ手間をかけずに資料に必要な素材を作れるという点で、工数削減に大きく貢献してくれています。上司としてもSechstantで作ってもらった資料は見やすいのでありがたいです(笑)。
営業活動の中でも活躍
金木: JAタウンのようなモール型のECサイトの運営者は、新規で出店してくれるショップの数を増やしていく必要があります。そのための営業活動の中で、新規のお客様にSechstantでまとめたデータ結果を持っていき、「あなたの扱っている農産物はこのような属性の会員さんが、こういう買い方をしているので、JAのサービスとマッチする」というような具体的な数字や根拠に基づいた営業提案が出来ています。
セキュリティも安心
金木: Sechstantで行った分析は、管理画面や注文情報に紐づく情報でありながら個人情報は見られないので、上記のように出店見込み者に営業にいったときにも、セキュリティの心配をせずにデータを活用でき、非常に安心です。
導入前は、個人情報に紐づく注文情報に関しての分析は、社内のセキュリティルームのなかでデータを抽出して個人情報部分消す必要があったため、手間がかかっていました。もしくは、Google Analyticsのように個人情報と関係のない総合的な分析しかできていませんでした。
効果的な広告施策をデータから考える
泉: Sechstantでの分析は、実は広告施策を考える際にも活用できています。 昨年、JAタウンに出店しているショップが『福岡県ウェブ物産展』という新型コロナウイルス感染症の影響で需要の減ってしまった福岡県内の農畜産物を対象に、福岡県が助成を行うキャンペーンを行っていました。
県の取り組みということもあって、全国的に告知をすることとなり、新聞に福岡県ウェブ物産展の広告を出すことが決まったのですが、「どこの地域の新聞に広告を載せた方がいいのか」とショップの担当者の方からご相談を受けました。通常JAタウンの利用者は、全体的に見れば都市圏に集中しているのですが、Sechstantで分析したところ、福岡県ウェブ物産展の商品を買っているお客様は、実は福岡在住の方が多いことが判明し、”地域を応援したいのは地域の人”だということに気付きました。ショップの担当者も、感覚的には「商品を購入してくれた方の多くは福岡県在住の方だろう」と思っていたそうですが、具体的な数字の裏付けがSechstantで出来たからこそ、これをもとに広告の予算配分や、広告を載せる媒体を決定していただくことができました。
SechstantはGoogle Analyticsやバックオフィス(管理画面)で出せないデータが簡単に出せる、痒い所に手が届く非常に有難いツールです。
今後Sechstantの導入を検討されている事業者へのメッセージをお願いします。
泉: Sechstantを導入すれば、「事業者側が持ちたいデータを持ちたいように加工してくれた上で、見やすくビジュアライズ化できる」ということが1番の特長であり、強みだと実感しています。JAタウンには実店舗はありませんが、他の事業者だと、例えば「店舗」と「ECサイト」を結び付けてデータを見たいということもあると思います。しかし、自分たちでデータを加工し、分析し、その結果をビジュアライズ化するとなると、かなり大変です。それをSechstant側で簡単に用意してくれるので、これから“データを使ってマーケティングに力を入れていきたい事業者であれば、ぜひSechstantは活用してみていただきたいです。JAタウンとしても導入して、かなりの業務の効率化につながっているので自信をもっておすすめできます。
金木: 今までECサイトの売上成長率は、105%~110%とゆるやかな成長でしたので、分析せずとも経験値から何とか運用が出来ていました。ただ、新型コロナウイルスの影響を受けて巣ごもり需要が増え、昨対で300%~400%という急激な成長率に変わってくると、どうしても経験の範囲からでは予測できないことも沢山あります。リアルタイムで分析結果が見られるSechstantはこれからの時代に合ったツールだと思っています。
今後の展望
金木: 今後はもっとLTV(Life Time Value)の高いお客様を作っていくための施策に力を入れて行きたいと思います。 そのためには、施策を行うための仮説を立てるところから始めなければいけませんが、導入前までは、データを整理することや、分析することがきちんとできていなかったので、仮説を立てることも出来ませんでした。Sechstantを使えば、JAタウンの詳細なデータが可視化できるようになるので、仮説立てや、施策の効果検証がスピーディーに出来るようになり、PDCAを回しやすくなると思います。
Sechstant担当者からのコメント
現在はCRMにフォーカスをあてて、JAタウン様のSechstantでの分析のご支援をさせていただいておりますが、今後はMD部分にも着目し、商品の在庫消化率や、在庫の補充などの傾向などが分かる“仕入れ目線”の分析が出来るよう分析機能の強化をしていきたいと思っています。常にお客様のニーズに合わせて自由に分析が出来るSechstantなので、今後もJAタウン様と共にコミュニケーションをとり続けながら、一緒に様々な取り組みに挑戦していきたいと思っています。
――
全農ECソリューションズ株式会社
金木 慶介(かねき けいすけ)
泉 湧貴(いずみ ゆうき)
●取材・文:近藤 七海