シチズン時計のファン獲得と販売チャネル強化、業務効率を目的としたサイト統合で訪問数が約15倍。
時計業界トップクラスの老舗企業として、業界をリードし続けてきた『シチズン時計』。「The CITIZEN」をはじめ様々なブランド展開を行い、最先端の衛星電波時計など、常に時計の可能性を考え、開発を重ねてきました。
そんなシチズン時計株式会社が、2021年3月にECサイトとブランドサイトの統合サイト「シチズンウオッチ オフィシャルサイト」を公開しました。今回は統合サイトを立ち上げた目的や背景、今後の展望についてお伺いさせていただきます。
シチズン時計株式会社 基本情報
<社 名>
シチズン時計株式会社
<事業内容>
各種時計類及びその部分品の製造及び販売並びに持株会社としての、グループ経営戦略の策定・推進、グループ経営の監査、グループ技術開発及び知的財産の管理その他経営管理等
<資本金>
32,648百万円
<本社所在地>
東京都西東京市田無町6-1-12
ユーザーとの関係を強化
――今回のサイト構築の目的について教えてください。
齋藤:目的は4つあります。
一番大きな目的は「MY CITIZEN」という既存の会員サイトと連携して顧客管理を行うことです。Web修理受付や延長保証、キャンペーン、予約販売等のサービス提供を通じてお客様との関係を強化していきたいと考えています。
次にECとブランディングの両立です。ECサイトとしての機能を追加すると同時に、ブランドイメージを重視した商品情報を提供し、さらに全国の販売店舗への送客に自然につなげる動線として活用できるようにしました。
そして、モバイルサイトのユーザビリティ向上です。スマホファーストを念頭に情報整理と設計を行い、モバイルでも使いやすいサイトにリニューアルする狙いがありました。
最後に、クラウドECによるシステムの最新性の維持です。ブランディング強化やEC施策に集中するため、システムメンテナンスやセキュリティのアップデートといった業務負荷を減らしたい、できるだけ専門の外部パートナーさんにお願いしたいと考えておりました。
――ecbeingを採用頂いた理由を教えてください。
齋藤:一番大きな理由はecbeingさんの国内EC構築実績の多さです。
豊富な導入事例のおかげで、事前にパッケージで実現できることの具体的なイメージを持つことができました。
また、プレゼンテーションの印象として、サーバルームの管理体制をはじめ、セキュリティ対策にかなり重点を置いていることが伝わりました。
さらに、サイト構築後の窓口も同じ担当が一貫してサポートしてくれるとのことでしたので、安心して依頼することができました。
――実際ecbeingをご導入頂いていかがでしょうか。
齋藤:思っていた以上にデフォルト機能の自由度が高かった印象です。
初めての大規模EC構築にあたり不安はありましたが、デザインチーム、システムチームともにecbeingさん側のプロジェクトマネージャーがしっかり対応してくれたので安心して進めることができました。
ブランディングとECの統合サイトなので2つのシステムを併用していますが、ページ更新は直観的に行うことができ、受注などECに関わるルーチン業務はシンプルに処理できるところが気に入っています。今後、両システムの管理画面のUIや操作感が統一されると、更に使いやすくなるのではと期待しています。
とにかくお客様にわかりやすく、使いやすさや需要を意識
――「シチズンウオッチ オフィシャルサイト」を構築、運用する上で重要視していたことを教えてください。
齋藤:お客様に分かりやすく情報を伝えることを重視しました。
ECとブランディングの統合サイトだからこそ、コンテンツによってはECのことを指しているのか、ブランドのことを指しているのか分かりづらくなってしまいます。
例えば、サポートページは商品購入方法のガイドなのか?シチズン製品の取扱説明なのか?そのような分かりづらさを減らせるよう、サイト構築以降も表現に注意して運用を進めています。
――今回のサイト統合に導入している機能について教えてください。
齋藤:腕時計購入を検討するうえで、各モデルの性能を比較できる機能は必須です。もともと表示順入れ替えなど機能面は充実していたのですが、今回パッケージに載せ替えるにあたり、機能を引継いだだけでなく、UIデザインも改修しました。特にスマホについては、デザインを工夫して可能な限り多くの情報が一画面内に入るよう、多くの項目が比較できるように一覧性を高める工夫をしています。
業務効率の面では、ニュース、サポート、ショップリスト、ブランド訴求など、各コンテンツをCMS化しました。
特にニュースとショップリストは更新が頻繁に発生するので、CMS化することで格段に使い易くなり更新コストもかなり減ったと感じています。
オフィシャルサイトの更新は関連部署も多いのですが、制作に必要な技術的知識を全員が持っているわけではありません。比較的簡単に、直観的に更新できる仕組みは助かっています。
――業務効率向上にも貢献しているんですね!ギフト関連の機能はいかがでしょうか?
齋藤:リニューアル以前から少規模のECサイトを運営しており、そのサイトのメインコンテンツとして取り扱っていたのがFTS(ファイン・チューニング・サービス)というカスタマイズ腕時計でした。その運用経験から、何かの記念で腕時計をカスタマイズして、大切な方へのギフトとして購入されるお客様も多いことが分かっていました。
今回のサイト統合にあたってもその辺りの訴求を意識して制作しています。
裏蓋刻印についても、ギフト目的でご購入するにあたりサービスをご希望されるお客様が多いです。すべての商品が刻印に対応しているわけではありませんが、今後もギフト需要が増えることは予想されるので、できるかぎりお客様の声にはお応えしていきたいと思っています。
――サイト統合時に苦労した点について教えてください。
齋藤:とにかく関わる人間が多いので隅々まで情報を行き渡らせることに苦労しました。
ある程度の覚悟はしていましたが、案の定スケジュールに大きな影響を及ぼしかねないタイミングで仕様変更も発生しました。ただ、その際もecbeingさんのプロジェクトマネージャーには柔軟に対応して頂き、大変助かりました。
訪問数が約15倍
――コロナ禍ではどのような影響や状況の変化がありますか?
齋藤:実店舗にお客様を誘導しづらくなったことで、ECサイトに対する期待が社員全体で一段階強くなった感覚があります。実際、他部署から「こういう施策をサイトでできないか」といったアイディア相談を受けることも多くなりました。今後も協力して進めていきたいと思っています。
とはいえ、腕時計のご購入シーンにおいて、実物を見て着用して、初めてお客様に伝わる感動は大切にしていきたいとも考えています。今後も実店舗の重要性が変わることはありませんので、コロナ禍の新しい行動様式に沿ったうえで、お客様にシチズン製品の良さを知っていただく役割もオフィシャルサイトとして担っていきたいと考えています。
――サイトリニューアルによる効果はいかがでしょうか?
齋藤:サイト規模が大きくなって、限定品等の一部モデルを除く、ほとんどの製品を公式サイトとして販売することができるようになりました。取扱いモデル数は以前に比べ3倍以上に増えています。
訪問数も約15倍になり、多くのお客様にサイトを見て頂けています。まずはシチズン製品の良さを、より多くのお客様に知っていただきたい。そういう意味で流入数の増加は嬉しいことだと思っています。
また、シチズンのブランド毎の特徴やコンセプトも伝わりやすくなったという感想をいただいています。
絞り込み検索についても、新しい機能ではありませんが、例えば光発電や電波時計など、腕時計を探すにあたり重視される条件を精査することで、より使いやすくなったという声もいただいています。
要件定義を丁寧に進めること
――今後の展望について教えてください。
齋藤:ECとブランド訴求は「シチズン製品の魅力を伝える」という点で両者矛盾するものではないと考えています。
サイトを訪れたお客様に、よりシチズン製品の品質やこだわりを分かっていただけるよう、情報を充実させていきたいです。
EC担当ではありますが、「EC」という限定された範囲にとらわれすぎないように、他のプロジェクトとの連携も進めて視野を広く、エキスパートであるecbeingさんにも協力していただき、サイトを充実させていきたいです。
――ありがとうございました。最後に、これからEC事業をはじめる企業にアドバイスをお願いします。
齋藤:サイトを立ち上げる前に意識していたことは、自分たちが何をしたいかをできるだけ具体的に、優先度や、その理由も明確にしてベンダー共有することでした。その際に理由や目的も一緒に伝えることで、プロ目線のアドバイスをもらうことができます。
また、サイト設計の時点で、ローンチ後のことも考えておかないと、機能があっても運用に手が回らないといった事態も発生します。在庫管理や受発注業務、お客様問い合わせ対応におけるリソースも考慮した上で、最適なUIや仕様を考えることが大切だと感じました。
――
齋藤 秀二(さいとう しゅうじ)
シチズン時計株式会社
●取材・文:塩見 駿介