医療従事者向けポータルサイトをワンパッケージで構築。大原薬品工業の営業戦略DX化に貢献 〜EC以外のサイトでもecbeingのCMSが貢献できた理由とは?〜
医療用薬品の研究開発及び製造販売を行っている大原薬品工業は、これまではジェネリック医薬品に強みを有する製薬メーカーでした。
そんな大原薬品工業が、新薬の研究開発を行い、承認を取得し販売していくビジネスの第一号として、神経芽腫という小児に多いがんに使われる新薬の製造販売承認を厚生労働省より取得し、発売しました。
今回は、大原薬品工業株式会社で、このビジネスの責任を負う新薬事業部門の野澤氏と今回のシステム業務に携わった秋山氏に、新薬事業部門の立ち上げや、ecbeingのシステムで医療従事者向けポータルサイトを構築したことについてお話をお伺いしました。
大原薬品工業株式会社 基本情報
<社名>
大原薬品工業株式会社
<事業内容>
医療用医薬品(オーファンドラッグ、ジェネリック医薬品)の研究開発及び製造販売
<設立>
1964(昭和39)年
<所在地>
本社:滋賀県甲賀市甲賀町鳥居野121-15
東京本社:東京都中央区明石町8-1 聖路加タワー36階
日本全国の神経芽腫の専門医、薬剤師、看護師にCMSで情報提供
――新薬はどのような医薬品なのでしょうか?
野澤氏:小児がんの一つに「神経芽腫」という、多くの患者が大体5歳までに発症するがんがあるのですが、その中でも特定の患者の方は治療による寛解が達成しても、再発し予後が不良になるケースも多いと言われています。この新薬はこういった患者に使われる薬剤として開発されました。
この薬剤は米国及びカナダでこういった神経芽腫の患者への標準治療薬として用いられており、日本での使用が待ち望まれていました。
日本では医師自らが臨床試験をして、弊社がその臨床試験データを使用して薬事承認申請を行い、この薬剤の製造販売に至りました。
神経芽腫の専門医の方々からはこの新薬に対する期待も非常に強く、承認される時点では多くの専門医がこの新薬の情報提供を待ち望んでいることはよくわかっておりました。
――この新薬の普及活動にあたりWebを活用されようとした理由を教えてください。
野澤氏:この薬剤は非常に投与方法が難しく、副作用も非常に多い薬剤であり適正使用の伝達が極めて重要です。
通常、大手製薬会社ならば各病院に担当者(MR:Medical Representatives(医薬情報担当者))がおり、必ずそこに訪問して情報提供できるようにしているのですが、弊社の売上規模では神経芽腫を診られている全国の病院へ定期的に訪問する弊社のMRはおりませんでした。
しかしながら、全国の神経芽腫の専門医にこの新薬の承認・発売を周知する必要があったため、Webサイトを活用し医療従事者向けポータルサイトとして情報を提供できる場所を作りました。
このサイトのリリースにあたっては、この新薬をサポートして頂ける専門医の研究学会グループへご相談させて頂き、サイトの周知や会員登録へのサポートをして頂くことで、このサイトを日本全国の神経芽腫の専門医に周知することができました。
――ecbeingのシステムから生まれたCMS「SiteMiraiZ」を今回のサイト構築のシステム選定対象に含めていただいた理由を教えてください。
野澤氏:これまでのecbeing様のサイトの構築実績で信頼がおけたこともありますが、弊社が望んでいた機能をSiteMiraiZの標準機能が網羅している印象があったことと、ワンパッケージでサーバーも含めシステム展開できているというのが一番大きかったと考えています。
一般のシステムパッケージをユーザーの要望に合わせてカスタマイズしていく業者も候補として拝見しましたが、コスト感が合わないことやシステム構築までに時間がかかってしまうことが懸念されました。
また、弊社自体がこのような製品のWebサイトを立ち上げるのが初めてであり、システムに詳しい社員も限られているため、弊社のニーズをお伝えし実現する機能がすでにそろっている「SiteMiraiZ」に決定しました。
待ち望んでいる医療関係者に情報を届けることが可能に
――サイト構築による効果はいかがでしょうか?
野澤氏:日本全国の多くの神経芽腫の専門医、薬剤師、看護師の方々はリリース直後からサイトへの会員登録をして頂き、現在ではその登録者数は、ほぼ想定通りとなっております。
また、会員登録時に弊社担当者からの連絡可能でご登録いただいた専門医、薬剤師、看護師と直接連絡を取れるようになりました。従って、弊社の担当者は、施設ごとの詳しい状況や新薬の採用プロセスを伺うことができるようになりましたので、このサイトは営業戦略の大きな役割を担っています。
さらに、情報提供の許可を頂いた医療関係者には、製品情報だけでなくウェビナーなどの情報もご案内できるようになりました。ウェビナーを行うにも、コストをかけて専門のメディア媒体を使用して開催を周知していくよりも、現在では、そのようなコストをかけずにセミナーを開催し、満足する集客の結果となっています。
我々のこのようなDX化において、それを想定以上に推進できた理由の一つは、コロナ禍での環境変化です。
具体的にはこの業界では従来、医療関係者の面談は、毎回アポイントメントを取り対面で情報提供することが基本であったことから、コロナ渦の病院ルールによりほとんどの病院が訪問禁止になったことで、Web面談やメールのやり取りだけで顧客とのコミュニケーションが完結するようになりました。
これはMRが少なく、病院との歴史が薄い弊社のような製薬会社が新薬を発売する状況では非常に有利になりました。
また、顧客とのWeb面談でも、一度に本社や専門職の参加を含めた複数の担当者で説明ができるため、情報の格差も生まれにくく、回答のスピード感もあり、場所も選ばないため、全国どこの病院ともコミュニケーションを図ることができました。
新たな試みとして、このサイトを通じて、一週間連続して1日2回、弊社担当者によるWeb開催のライブ説明会を行いました。これにより、登録者がいつでも都合のいい時間帯で参加でき、気軽に質問をできるような企画も実現しました。
――実際にご活用いただいて利便性を感じられた機能はございますか?
秋山氏:HTMLやCSSの知識がなくても、直観的にページ編集などの操作ができるUI・UXが充実しており使用しやすいです。
またレポーティング機能はGoogle Analyticsを見ずに、「SiteMiraiZ」の中で簡単なデータが取得でき、メール配信も手間なく使用できる点は重宝しています。
情報提供についても「SiteMiraiZ」なら会員グループが簡単に作成でき、配信許可を得ている医療関係者だけをセグメントしてメール配信することができ便利に感じています。
――弊社スタッフの対応はいかがでしょうか?
秋山氏:ecbeingのスタッフさんは、操作に関する不明点はすぐに電話やWeb会議システムなどで詳しくご教示下さり、問題発生時は、各専門部署からの解決策を提示して頂き、迅速な対応をして下さり信頼できます。
Webサイト構築時は、スケジュールが前倒しになったにも関わらず、細かな修正にとことん付き合って頂き、無事に予定通り完成できたことは、すごく印象に残っており感謝しております。
使いやすくワンパッケージで構築できるSiteMiraiZ
――今後の展望について教えてください。
野澤氏:神経芽腫という特殊的な疾患の製品サイトという中で、多くの専門医の方々に会員登録して頂けたので、これをベースにネットワークを活かして何かできないかというのはあります。(もちろん、専門家の研究会でのネットワークとの切り分けは考えなくていけませんが。)
また、SiteMiraiZが弊社内で利用しやすいことは今回の構築で理解できましたので、同様に他の新薬を発売する際にもSiteMiraiZを活用してサイトを作りたいと考えています。
我々は、オーファンドラッグを始め、患者さんの少ない領域での新薬ビジネスを展開する中で、またコロナをきっかけとしたDX加速社会が益々進展していく環境で、Webを使った総合的なDXは今後の営業の中心の戦略になっていくと思っています。
――ありがとうございました。最後に、これからEC事業をはじめる企業にアドバイスをお願いします。
野澤氏:サイト構築にあたりシステムベンダーを選ぶときの優先順位は様々だと思いますが、自分たちができないことや実現したいことを助けてくれるベンダーやシステムを選択すべきだと思います。
一般パッケージのシステムで自分たちの実現したいことを一からシステム構築すると、より高機能なシステムはたくさんありますが、その分、操作性やコスト、納期も様々です。
弊社の場合、IT関連に疎いため、簡易的に操作できることや機能がある程度標準で備わっていること、加えてセキュリティや保守サポートが充実していることが決め手でシステムを選定しましたので、自分たちが必要なものを軸にシステムやベンダーを選ぶことが大事だと思います。
――
大原薬品工業株式会社
野澤 直充 氏
大原薬品工業株式会社
秋山 奈美 氏
●取材・文:塩見 駿介