今こそ小売りが取り組むべき店舗受取サービス
カーブサイドピックアップとは?
ECで注文し店舗の駐車場で受け取る次世代のショッピング
ECで注文し店舗の駐車場で受け取る次世代のショッピング
近年、特に注目を集めている「カーブサイドピックアップ」という言葉をご存知でしょうか。名前は聞いたことがあっても、ドライブスルーとの違いがわからない、といった方もいることでしょう。カーブサイドピックアップは、コロナ禍でも売り上げをアップさせるための方法の一つであり、オムニチャネル戦略とも親和性が高いとされており、EC事業者も知っておくべきサービスです。
そこで今回は、カーブサイドピックアップについて、事例を交えて解説していきます。
近年、特に注目を集めている「カーブサイドピックアップ」という言葉をご存知でしょうか。名前は聞いたことがあっても、ドライブスルーとの違いがわからない、といった方もいることでしょう。カーブサイドピックアップは、コロナ禍でも売り上げをアップさせるための方法の一つであり、オムニチャネル戦略とも親和性が高いとされており、EC事業者も知っておくべきサービスです。
そこで今回は、カーブサイドピックアップについて、事例を交えて解説していきます。
カーブサイドピックアップとは
まず、カーブサイドピックアップについて、他のサービスと比較をしつつ、その特性を紹介していきます。
カーブサイドピックアップとは
カーブサイドピックアップ(Curbside pickup)とは、オンライン上で注文した商品を、店舗の駐車場で受け取ることができるというサービスのことを指します。具体的には、利用者が商品を注文した後、店舗の駐車場に指定された時間に車を停めて連絡をすると、スタッフが車に商品を積み込んでくれるという仕組みとなっています。
ドライブスルー・BOPISとの違い
カーブサイドピックアップと類似のサービスとして挙げられるのが、ドライブスルーとBOPISです。では、両者とカーブサイドピックアップの違いはどこにあるのでしょうか。
その違いを以下の表にまとめました。
カーブサイドピックアップ | ドライブスルー | BOPIS | |
受取場所 | 店舗の駐車場 | ドライブスルーのレーン | 店舗 |
決済 | オンラインで事前に | 注文時に | オンラインで事前に |
時間 | 受け取りまでスムーズ | 注文から受け取りまでに少し時間がかかる | 受け取りまでスムーズ |
・ドライブスルー
特に飲食店で多く見られる業態がドライブスルーです。ドライブスルーは、商品の注文や決済をその場で行うという点でカーブサイドピックアップと異なります。
メリットとしては、店舗ですべて完結する点や、多くの場合現金での支払いにも対応している点などが挙げられます。一方で、注文をその場で行うため、商品を受け取るまでには少し時間がかかります。
・BOPIS
BOPIS(Buy Online Pick up Store)とは、商品をオンライン上で注文し、店舗でその商品を受け取るという形式のものを指します。カーブサイドピックアップとは、店舗に入って商品を受け取るという点で異なります。BOPISのメリットとして挙げられるのは、商品をスムーズに受け取れる点、店舗に行っても在庫切れで買えないということがない点などです。
広義では、カーブサイドピックアップもBOPISの一種としてみなすこともあります。
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カーブサイドピックアップのメリット
続いて、カーブサイドピックアップのメリットについて、利用者側と店舗側のそれぞれの視点から紹介していきます。
・利用者側のメリット
利用者側のメリットとしては、下記の5点が挙げられます。
@配送手数料がかからない
A店内を歩き回って商品を探す手間がかからない
B大量の商品を買っても車に載せる手間がかからない
Cドライブスルーなどと比べて時間がかからない
D非接触で商品を受け取ることができる(店舗に入らないため、他の客との接触も最小限にできる)
・店舗側のメリット
店舗側のメリットとしては、下記の2点が挙げられます。
@コロナ禍で外出を極力控えている消費者にアプローチできる
A在庫切れによる販売機会のロストを減らせる
利用者からすると、店舗に寄って商品を受け取るだけですむため、買い物にかかる手間を大幅に削減することができます。また、コロナ禍になったことで、非接触で商品を受け取れるという点も大きく評価されるようになってきました。
店舗側の最大のメリットは、コロナ禍でも消費者にアプローチできる、という点です。また、事前にオンライン上で注文を受けるという性質から、在庫切れによる販売機会の損失を極力防げるという点もカーブサイドピックアップのメリットです。
カーブサイドピックアップが注目を集めている背景
カーブサイドピックアップは、ここ数年で一気に広まったサービスです。ここからは、注目されている背景について解説していきます。
コロナ禍
カーブサイドピックアップが注目を集めている最大の理由は、やはり新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会の変化です。コロナ禍になったことで、消費者は極力外出を避けるようになりました。その結果、あらゆる業界で店舗の売り上げは減少しています。
そんな中、他の利用者との接触をなくし、店員とのやりとりも必要最小限に抑えられるカーブサイドピックアップは、コロナ禍での販売に適していると考えられるようになったのです。
実際にコロナ禍でカーブサイドピックアップの売り上げが大幅に伸びているというデータも少なくありません。 アメリカの小売り大手Targetは、2020年第2四半期のカーブサイドピックアップの売り上げが、700%以上も伸びていると発表しています。
特に普及しているのが、食料品や日用品を扱うスーパーなどです。生活に欠かせないこれらの商品は、いくら外出を控えていても買わなければならないものです。そこで、極力接触を避けるためにカーブサイドピックアップが利用される傾向にあります。
OMO、オムニチャネル戦略の普及
OMOやオムニチャネル戦略の普及も要因の一つだと考えられています。
OMO(Online Merges with Offline)とは、オンライン上での買い物と実店舗での買い物の境界線をなくそうとするマーケティング戦略を指す言葉です。カーブサイドピックアップは、まさにOMO戦略の一つと言えるでしょう。OMO戦略には、オンライン上と実店舗の両方でユーザーを囲い込み、ショールーミングなどによる利用者離れを防ぐといった効果が期待できます。近年では、多くの消費者がインターネットで商品を調べ、複数の製品の値段や性能を比較してから購入する商品を決めるという買い方をしています。オンラインショップと実店舗のつながりの重要性が高まったことで、カーブサイドピックアップも注目されるようになりました。
また、オンラインとオフラインのそれぞれの特性をいかし、両者をうまく組み合わせることで利益をあげるという観点から見れば、オムニチャネル戦略にもつながっています。このように、カーブサイドピックアップは、現代の消費者のニーズに合った施策であることから、普及が進んでいるのです。
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カーブサイドピックアップの導入事例
ここからは、カーブサイトピックアップを導入した事例を紹介します。
ウォルマート
アメリカの小売り大手ウォルマートは、カーブサイドピックアップを早期に導入し、多くの利益をもたらしたことで知られています。カーブサイトピックアップが広まっていったのは、ウォルマートでの成功がきっかけの一つとも言われているほどです。
具体的な売り上げを見ると、アメリカでコロナの感染が拡大した2020年2月から4月期に、既存店売り上げが前年同期比10%アップ。2020年上半期には、EC事業の売り上げが前年比97%アップしています。人気のあまり、2020年2月以降には、カーブサイドピックアップ用の敷地を30%も拡大しています。
日本マクドナルド
日本マクドナルドでは、2020年より、「パーク&ゴー」という名前のカーブサイドピックアップサービスを展開しています。公式アプリで注文をした後、店舗の駐車場に車を停めて決済を行うと、店員が商品を車まで届けてくれるというサービスです。ドライブスルーのレーンを通る必要はなく、車を降りる必要もないため、ドライブスルーよりもスムーズに商品を受け取ることができます。このサービスは全国の店舗で導入されており、日本マクドナルドは今後も導入店舗を増やしていくとのことです。
参考:マクドナルドのモバイルオーダーが、さらに便利に!
イオン
日本全国にスーパーを展開しているイオンでは、本州・四国のイオンネットスーパーで、店舗受け取りサービスを手数料無料で実施しています。車に乗ったまま受け取りできる「ドライブピックアップ」のほかにも、指定カウンターで受け取りできる「カウンターピックアップ」、店内ロッカーで受け取りできる「ロッカーピックアップ」を展開しており、コロナ禍での利用に際して、利用者が極力人との接触を避けられる仕組みを構築しています。
薬王堂
東北地方でドラッグストアを展開する薬王堂では、「P!ck and(ピックアンド)」というカーブサイドピックアップサービスを導入しています。具体的には、利用者が専用アプリで注文をして店舗に車で向かうと、指定された時間にスタッフが商品を届けてくれるというサービスです。送料は無料で、最短1時間で受け取ることが可能となっており、1注文につき220円(税込)をサービス利用料として支払う必要があります。 なお、サービス開始当初は日用品や食品のみが対象となっていますが、今後はネット販売の許可を取得して医薬品にも対象を広げる見込みとのことです。
参考:事前に注文 ぱぱっと受け取り
課題と今後の展望
最後に、カーブサイドピックアップが抱えている課題と今後の展望について論じていきます。
カーブサイドピックアップの課題
カーブサイドピックアップの課題となるのは、以下の2点です。
・利用者が同じ商品ばかり購入するようになる
店内での買い物と違い、目当ての商品以外を目にする機会がほとんどないため、利用者は同じ商品ばかり購入してしまうことが想定されます。この問題を解消するためには、EC内で新商品の告知や、関連のおすすめ商品を表示するなど、EC上での利用者へのアプローチがカギになります。
・店員の負担が増える(人件費の増加)
新たにカーブサイドピックアップサービスを導入する場合、店舗スタッフは、注文された商品を探し、車まで届けるという新たな仕事が発生することになります。よって、導入にあたっては、人員を追加や、店舗スタッフへの教育が必要となり、人件費は増加するでしょう。カーブサイドピックアップ導入する前には、人件費が増加しても利益が見込めるシステムとなっているのかをしっかりと精査しなければいけません。
今後の展望
最後に、カーブサイドピックアップの今後の展望についてお話しします。
・さまざまな業界への普及
カーブサイドピックアップが導入されているのは、現状だと食料や日用品のサービスがほとんどです。今後は、家具やホームセンターなど、サイズの大きな商品を販売している業界での普及が広がっていくものと見られています。
・車社会のコミュニティでの普及
また、地方では、車社会となっている地域も多く、カーブサイドピックアップの需要があると考えられています。今後は、都市部よりも山間部の多い地方でのサービスの普及が期待されます。
・関連サービスの利用増加
カーブサイドピックアップサービスに注目が集まれば、それを実現するためのシステムの需要も高まります。カーブサイドピックアップを実現するためには、リアルタイムな在庫管理やオンライン上で利用者が購入した商品がひと目でわかるようなシステムが必要です。今後は、カーブサイドピックアップの普及とともに、関連システム・サービスの発達・普及も見込まれるでしょう。
まとめ
カーブサイドピックアップは、現代に即したサービスであり、導入することで大きなメリットを得られる可能性もありますが、やみくもに導入すれば店舗は混乱し、かえってコストがかさむこともあるでしょう。サービスの特性を理解したうえで、自社の戦略や性質とマッチしているのかを検討することが重要です。