ダルトンがアプリの載せ替えで『ファンコミュニティ』を構築しアプリ経由の注文率向上とコスト大幅削減
〜アプリとWEBサイトを棲み分けて相乗効果を発揮したEビジネス戦略とは〜
〜アプリとWEBサイトを棲み分けて相乗効果を発揮したEビジネス戦略とは〜
1988年創業のインテリア雑貨・家具のメーカーである株式会社ダルトンは、卸売業と関東関西を中心に13店舗を展開する直営店・オンラインショップを運営しています。
“モノや空間へのこだわりを通して世の中にワクワクを伝える”という理念をもとに、“誰もが使うあたり前に在る道具、身の回りのひとつひとつを今よりもっと面白くすることで「道具を愉しむ、もうひとつの豊かさ」を提案する”というブランドコンセプトを持ち、商品開発や企画を進行しています。
そんな株式会社ダルトンは、ecbeingにてBtoC向けとBtoB向けのECを構築していますが、今回はECサイトではなく、2022年12月にecbeingのマイクロサービス「OMOアプリ+」を使用してリニューアルしたアプリ「ダルトン公式アプリ」について、リニューアルの背景や目的、戦略、機能面、リニューアル時に意識されていたこと、今後についてなどを株式会社ダルトン 齋藤 理紗 氏にお話し頂きました。
株式会社ダルトン齋藤 理紗 氏
1988年創業のインテリア雑貨・家具のメーカーである株式会社ダルトンは、卸売業と関東関西を中心に13店舗を展開する直営店・オンラインショップを運営しています。
“モノや空間へのこだわりを通して世の中にワクワクを伝える”という理念をもとに、“誰もが使うあたり前に在る道具、身の回りのひとつひとつを今よりもっと面白くすることで「道具を愉しむ、もうひとつの豊かさ」を提案する”というブランドコンセプトを持ち、商品開発や企画を進行しています。
そんな株式会社ダルトンは、ecbeingにてBtoC向けとBtoB向けのECを構築していますが、今回はECサイトではなく、2022年12月にecbeingのマイクロサービス「OMOアプリ+」を使用してリニューアルしたアプリ「ダルトン公式アプリ」について、リニューアルの背景や目的、戦略、機能面、リニューアル時に意識されていたこと、今後についてなどを株式会社ダルトン齋藤 理紗 氏にお話し頂きました。
株式会社ダルトン 基本情報
<社名>
株式会社ダルトン
<設立>
1988年7月14日
<事業内容>
ファッション、インテリア雑貨等の輸入・卸売業務全般
<資本金>
1,000万円
<所在地>
本社:〒420-0814 静岡県静岡市葵区長沼南11-5
ダルトン公式アプリ画面
ファン化促進のためのアプリとWEBサイトの棲み分け
まず、アプリリニューアル以前よりご利用頂いているecbeingの「BtoC向けECサイト」、「BtoB向けECサイト」、「関連ツール」について導入の経緯と流れについて教えてください。
齋藤氏:弊社では2016年から2020年の間に”販路の拡大”を戦略として掲げ、その中のひとつとして、BtoC ECサイトの立ち上げとコーポレートサイトのリニューアルをおこないました。
立ち上げの時からecbeingさんにお願いをしており、お付き合いとしては9年目となります。
ECサイトの構築だけではなく、弊社として強みである直営店の存在意義や、弊社が目指したい方向性・こだわりを理解して頂きながら、運用支援にも入って頂いていました。
構築後の運用支援の中で、Instagram連携ツールの「visumo(ビジュモ)」やレビュー最適化ツールの「ReviCo(レビコ)」などのマイクロサービスも、すぐにご紹介頂き、弊社が実現したいことに近いサービスであったため導入しています。
またBtoBサイトについては、2020年9月に立ち上げをしました。
BtoBとBtoCの在庫連携が必須であることや商品マスターデータや社内フローなど、運用面も考慮した時に、同じベンダーの仕組みを使用することがスムーズであると判断し、BtoBサイトもecbeingさんに依頼したという経緯があります。
アプリをリニューアルされた背景と目的について教えてください。
齋藤氏:そもそもアプリはECサイト構築の翌年 2017年に他社サービスで新規に立ち上げたところから始まりました。
直営店とオンラインショップは共通会員ですので、当初、店舗の会員証として使えることと、ECとのポイント連携をメインに構築しました。
ECができてから初めて会員化が始まったわけですが、まずは会員の母数を増やすことに注力しました。ある程度会員が増えていく中で、会員の方々のファン化をどのように実現していくかというフェーズに移っていきました。
以前のアプリはWEBサイトとアプリの棲み分けが明確ではなく、アプリを使用するメリットも弱かったため、ファン化を促進するためにも、まずはアプリとWEBサイトの棲み分けから改めておこない、その中で目的にあったアプリの構成にしたいと思い、リニューアルをおこなうことになりました。
具体的な棲み分けとして、WEBサイトは弊社からの情報が見やすく全て集約されているもの、アプリはコミュニケーションツールとして、ファンの方々の遊び場、相互にコミュニティを作りあげるもの、として棲み分けをしました。
そのためアプリはファンの方にどのように利用してもらえるかをイメージしながら構築を進めていきました。
ecbeingを選定された理由を教えてください。
齋藤氏:元々アプリはecbeingさんではない、別のシステムを使用していました。
サイトとアプリでシステム会社が2つに分かれて運営すると、サイトもアプリも毎月行う企画や施策、毎年変わっていく課題に合わせて臨機応変に対応していく中で、余分な改修の増加や進行スピードの低下、依頼や相談をする際の切り分けの難しさなど、限られた社内工数の中でおこなうには大きな課題の一つでした。
そのような中でecbeingさんには、サイトオープン時より運用支援に入って頂いており、弊社の課題を社内の人間同様に理解して頂いていたことや、わからないことがあれば電話ですぐ聞けるなどの日々の連携のしやすさを実感していましたので、WEBサイト同様に、分析と改善を同時に行っていける方が良いと考え、ecbeingさんのOMOアプリ+の導入を決定しました。
顧客満足度を高める「バーコード読み取り」と「スタンプラリー」
アプリで実店舗商品のバーコードを読み取ることで商品詳細ページへ遷移ができるようになったかと思いますが、この機能を導入された経緯や戦略について教えてください。
齋藤氏:弊社では数千SKUの商品を小さな雑貨から大きな家具まで取り扱っています。
また、店舗も倉庫型の大きなお店やフロアが分かれているお店もあり、スタッフが全てのお客様に接客をできるわけではありません。
お客様自身が検討したい時、とりあえずお気にリストに入れておきたい、他の種類があるか把握したい時など、”ちょっと調べたい”に対応できるのではと考え、できるだけ簡単にお客様のデバイスで情報を見ることができストックできる状態になるバーコード読み込みを取り入れました。
元々QRコードを商品ごとに発行して同様のことをおこなっていましたが、全商品分のQRコードを用意し、商品一つひとつに取り付けるのは大変でしたので、すでに商品についているバーコードを読み取るだけ実現できるのは理想的でした。
ただ、現状バーコード読み込み機能の訴求が浸透しているわけではないので、今後はアプリの中にある機能をお客様に理解して頂くためのご案内をしたいと思っています。
ロイヤリティを高める施策として、実店舗施策にて活用されている、購入時のみチェックインしスタンプが付与される仕組みについて、導入のきっかけや戦略、現在の活用状況について教えてください。
齋藤氏:元々アプリリニューアルのタイミングで、会員の方が参加できるようなアプリ限定コンテンツも欲しいなと思っていました。またアプリのリニューアルの前に、直営本部メンバーや店長などに、どんな機能があると良いかをヒヤリングし、その中で「店舗のスタンプラリーがあったら楽しそう」という意見もあったので、リニューアル当初より実装をイメージしていました。
弊社直営店は店舗によってコンセプト・内装が異なります。
同じダルトンでも違う発見があるので、色々な店舗に足を運んで楽しんでもらいたいという思いから、スタンプラリーを使うことでお客様に複数店舗を知って頂くきっかけになるのではないかと思っています。
実際、まだ開始はしておりませんが、動き出した際には各店舗の買い周りを期待しています。
企業側目線とお客様側目線と第三者目線による説得力のあるコンテンツ
アプリ上でファンコミュニティならではのコンテンツをvisumo、ReviCoで実現しているかと思いますが、具体的にどのような活用や見せ方をされているか教えてください。
齋藤氏:そもそもアプリのHOMEにはタブで切り替えてみることができる"商品と出会う"ための目線を変えたコンテンツ導線を用意しています。
「PICK UP」「ITEM」「BLOG」「COLUMN」は弊社から発信しているDULTON発信・目線のコンテンツで、「SO GOOD(visumo)」「USER'S VOICE(ReviCo)」はお客様発信・目線のコンテンツになります。
「SO GOOD」はvisumoを活用した「アプリ限定のコンテンツ」となっています。
WEBサイトにもvisumoは連携させていますが、主に「商品を探す為の導線」として活用しているため、「FURNITURE」や「OUTDOOR」など商品カテゴリ軸に展開しています。
アプリでは、「NICE PHOTO」や「GOOD CUSTOMIZE」「ENJOY SHOPPING」などのカテゴリに分け、見ていて楽しめる・アイデアをもらえる・店舗に行きたくなるような投稿をセレクトし、商品カテゴリの枠だけでは拾い切れていなかった投稿も、アプリでは見ることができます。
また「USER'S VOICE」はWEBサイト同様にユーザーのリアルな声を見た上で、商品を知り購入して欲しいという思いから、レビューもコンテンツとしてアプリ上に設置しています。
visumo(ビジュモ)とは…
Instagram・Twitterのユーザー投稿、スタッフによるコーディネート例や接客コメント、LIVE配信動画やIGTV、Youtubeなどの動画などをECサイトに埋め込み、コンテンツを充実させることができるビジュアルマーケティングプラットフォーム。
ReviCo(レビコ)とは…
良質なレビューをカンタン収集し、運用負荷なくEC購入率大幅アップできる“自走する”レビューマーケティングプラットフォーム。
CMS「SiteMiraiZ(サイトミライズ)」の記事機能を活用した「COLUMN」もありますが、どのような記事を現状どのくらいの頻度で作成されているのか教えてください。
齋藤氏:今まで弊社は「言葉で表現する」ことをあまり積極的にはおこなっていませんでしたが、今後さらにコアファンを作っていくことを考えると、やはり商品やビジュアルだけでなく、ブランドのバックグラウンドや、想いに共感をした時に、より深く好きになって頂けるのではないかという結論に行き着き「COLUMN」の実施を決定しました。
頻度としては現状月1から2回ぐらいで更新しており、店舗の店長にインタビューしたような形式で、その店舗のコンセプト、店長になった経緯といったようなことを、何回かに記事を分けて公開しています。
また元々やっていた「D-PEOPLE」というコンテンツがあるのですが、弊社の信念に共感してくださった方々を紹介する連載企画となっており、様々なフィールドで活躍する方をご紹介しています。
その方のお仕事のお話や、ダルトンとの出会いなどをインタビューしており、第三者に弊社を語っていただくことの説得力や期待もありこの企画も始まりました。
こういった取り組みは、基本的には想いに共感して頂ける方を増やせるようなブランディングが目的にはなりますが、WEBサイト上ではサイト統合した影響もあり、SEO的な効果も徐々に出てきている状況です。
また店舗発信の「BLOG」も同時に見直しをおこないました。
店舗発信である意味を考え、コアなファンの方が読んで楽しめる、ひらめきをもらえるようなブログになるよう直営本部でコンテンツを考えていきました。
最近ではDIYや商品のアレンジ方法などをメインにアップしており、内容も濃いものになってきています。
結果閲覧数は倍以上となり、ユーザーアンケートや社内でも好評で、実際にブログを見てご来店されるお客様もいます。
アプリリニューアルをきっかけに既存のコンテンツもブラッシュアップすることができました。
統合サイトにする前、「BLOG」はコーポレートサイトにあったのですが、検索ではECサイトに流入することが多かったため、なかなかブログに辿り着けずにいました。アプリを機に流入も変わり、より見られることでお客様にも訴求や想いが刺さりやすくなったという部分では、サイト統合のメリットもあり、アプリリニューアルが相乗効果になっています。
会員別のセグメント配信と運用の簡略化
Sechstant CDP(ゼクスタント)と連携し、アプリ活用後の分析や改善を支援の中で対応できるようになりましたが、実際に見える化できた具体的な改善点など教えてください。
齋藤氏:今期から会員施策を増やしており、会員ごとの施策を裏で走らせ、効果検証をしています。OMOアプリ+にしたことでセグメント配信ができるようになったので、アプリのPUSH通知ができるようになりました。以前は会員別に行うことができなかったのでそこは大きく活用できるところだと考えています。
現状例えば、ある条件を満たした一部の会員の方だけにクーポンやポイント付与率UPなどの施策をセグメント切りしながら進めています。
まだ分析の深掘りまでできていませんが、今後検証を繰り返し、改善点と効果を見ていきたいと考えています。
Sechstant CDP(ゼクスタント)とは…
EC、実店舗の顧客・購買データ、アクセスログを外部ストレージに蓄積、数値を可視化することで、これまで見えてこなかった総合的なマーケティング分析が簡単に可能。施策立案の最適化、売上向上に寄与いたします。
アプリのUIUXなどのデザイン面や運用面で意識されていたことについて教えてください。
齋藤氏:できるだけ検索しやすく、探しやすい構成にしたいと思い、キーワード検索も含めヘッダーに検索枠を設け、”自発的に探す”項目は一括りにまとめました。
アプリを使用されるお客様はある程度ダルトンの商品軸や、テイストを知っている場合が多いです。もちろん新商品やイベント経由で商品に辿り着く導線も必要ですが、ある程度欲しいものをイメージして入ってくることも多いので、探しやすさを意識した構成にしています。
ちなみにサイト内検索ワードは、カスタマーのメンバーに時間を見つけて地道に強化対応してもらっています。そのおかげもあり、サイト内検索の0件ヒット数の割合が少ない状況です。
今後も検索で表示できていない商品を減らせるよう、深堀して強化していきたいと考えています。
運用面でいうと少しでも簡略化したいという思いはありました。
管理画面が複数あると行き来が多く手間も発生してしまいますが、OMOアプリ+ではEC管理画面の中でアプリを操作できることや、会員別施策を行う場合にもセグメント配信ができることなどは運用がしやすくなった点です。
構築時に苦労されたことを教えてください。
齋藤氏:どのサービスでも最初はそうですが、システムの仕様が把握しきれず、どこまで表現・実装ができるのかといった、仕組みを理解するのに時間が掛かりました。
そのため、リニューアル期間中、毎日ecbeing担当者の方と電話をして、分からないことを聞いていました。
ecbeingさんにもかなり負担をお掛けしていたと思いますが、どうにか実装まで持っていって下さったので、とても感謝しています。
またアプリに関しては店舗で稼働し続けているものになるので、切り替え後の不具合が起きないかと、新しいアプリをスタッフ自身が理解できるか、既存ユーザーに違和感がないか、という部分はかなり緊張感を持ち、課題の整理と進行状況の確認を徹底しました。
スタッフの方々が案内する時に不安にならないようなマニュアルの作成と、何回かに分けて店長への説明会をリモートで実施しました。
スタッフの方は日々の運用で慣れているので、非常に理解も早く、すごくスムーズにリニューアルの対応をしてくれたので、助かりました。
旧アプリから新アプリまでの移行期間を2ヶ月ほど設けて誘導を行いましたが、大きな問題も無く、スムーズに移行ができ、その時初めて安心できました。
アプリ経由の注文率向上と大幅なコスト削減
サイト構築によって得られた効果などを教えてください。
齋藤氏:目的としていた「アプリとWEBの棲み分け」「運用負荷軽減」が実現できたと思います。
またコスト面も大幅に削減させることもできた上で、アプリ経由のEC注文率が向上しています。まずは目標としていた数値をクリアしたので、今後さらに活用させ、自社媒体の売上割合を増やしていきたいです。
当初の目的であるファンコミュニティーツールとして、さらにファンの方が欲しい情報や欲しいサービスを追求し、ファン化を加速させていきたいです。
今後ecbeingを活用して取り組んでいかれたい構想や、戦略をお聞かせください。
齋藤氏:今まではツールが点で存在していましたが、サイト統合やOMOアプリ+の導入よりさらなる相乗効果が生まれ、面で繋がるようになった感覚があります。
またそれぞれの機能を活用することで、表現の幅が増えています。
今後さらに会員に向けた企画・サービスを増やし、コアファンを獲得していきたいと思っています。
弊社は大型の家具から数百円の雑貨まで取り扱っており、商品のテイストも多岐に渡るため、時期やお客様層によって欲しい情報は様々です。
そのため、時にはノイズとなってしまう情報もあるため、会員に合わせた情報とサービスの提供を行うため、Sechstantを活用した会員分析と施策の実施を強化していければと考えています。
――
株式会社ダルトン
齋藤 理紗 氏
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●取材・文:塩見 駿介