Z世代に聞く ECサイトのデザイン志向
Z世代は様々な方法で購買をしており、特にECサイトでの購買機会が増えてきています。ただ単に「使いやすいサイトだから」、「魅力的な商品を売っているから」、という理由だけでは購買に直結することは難しく、複雑な思考や行動の上で購買を行っています。
本記事ではZ世代、特に大学生に向けて効果的に自社ECを利用してもらうためにはどのようにすれば良いのかを「デザイン」の観点から洗い出していきます。実際に大学生にアンケートを取り、調査結果とそれを踏まえた企業がとるべき行動を解説します。
Z世代は様々な方法で購買をしており、特にECサイトでの購買機会が増えてきています。ただ単に「使いやすいサイトだから」、「魅力的な商品を売っているから」、という理由だけでは購買に直結することは難しく、複雑な思考や行動の上で購買を行っています。
本記事ではZ世代、特に大学生に向けて効果的に自社ECを利用してもらうためにはどのようにすれば良いのかを「デザイン」の観点から洗い出していきます。実際に大学生にアンケートを取り、調査結果とそれを踏まえた企業がとるべき行動を解説します。
※本記事の「デザイン」とは「広義のデザイン」を意味していて、配色やレイアウトなどの見た目と、検索〜購買までのサジェスト機能などの機能面をまとめたものとなっています。
Z世代の特徴とは
Z世代の特徴
Z世代はデジタルネイティブと呼ばれる世代で、生まれた時からすでにインターネットと触れ合っています。また、社会問題に関心を寄せており、配色にも独特の嗜好性を持っています。最近では「タイパ(タイムパフォーマンス)」という言葉が誕生し、時間対効果を求める姿勢も見せています。
また、LTV(顧客生涯価値)やコト消費を重要視する傾向があり、ブランドの世界観やコンセプト、体験型の商品や社会貢献につながるような商品・サイトに興味を示すことが多いことがわかっています。
ECサイトにおけるZ世代の特徴
Z世代は対面での販売だけでなく、ECサイトを利用した購買が増えています。ジャンルを問わず洋服や家具家電、日用品にいたるまでECを使って購入するという機会も多く、その需要は今後も伸びていく傾向にあります。(※1) では、どのようなECサイトが実際に利用されているのでしょうか。
Z世代が数あるECサイトの中から利用するサイトを選択するのには「基準」があると考えられます。その基準の1つが、今回取り上げる「デザイン」です。
Z世代はECサイトのどのようなデザインに魅力を感じているのか、Z世代から選ばれているECサイトにはどのような特徴があるのかを調べるため、アンケート調査をおこないました。
大学生に向けたアンケート調査
今回は、18〜23歳までの56人の大学生にアンケート調査を行いました。質問項目は、以下の通りです。
- 性別
- 一人暮らしor実家暮らし
- 生活費等以外の自由に使えるお金の金額(一か月)
- 何を買うときにECサイトを使うのか
- 気に入っているECサイト
- 機能面で気に入っているポイント
- 見た目で気に入っているポイント
- 使いたくなるECサイトはどのようなものか
本アンケートは大学生に焦点をあてた調査のため、仮に全年齢を対象におこなった場合と結果に違いが出てくる可能性があります。そのため一般的に予測される回答を仮説建て、大学生に向けた調査で得られた結果とどのように差がでるのかを考察します。 複数のアンケート(※2)を参考にして、以下のようにいくつかの結果を考察してみました。
仮説@:一か月に使えるお金が多くない学生や一人暮らしの学生は男女関わらずAmazonや楽天市場などの比較的セールが多く開催されているサイトを使う傾向にある。好まれるECのデザインとしては、セールを大々的に示すようなポップや、そのポップがわかりやすいような派手な見た目のサイトを選ぶ。ECサイトでは、日用品や飲食物などまとめ買いができるものを購入するために使う傾向にある。
仮説A:一方、実家暮らしの学生は一人暮らしの学生と比べて自由に使える金額は多いので、ある程度Amazon等のセールが多いサイトだけではなく、メーカーが運用しているようなECサイトを利用する。サイト内での閲覧を元にしたランキングで提示された商品やそれに類似するものを購入する傾向にあり、見た目に関してはあまりこだわりが無く、シンプルな見た目を好んでいる。
仮説B:性別による利用されるサイトの違いはなく、Amazon、楽天などのモール型ECサイトが好まれる。
以上の考察を踏まえた上で実際の結果と照らし合わせていきます。
アンケート結果と考察
(図1)生活費等以外の自由に使えるお金(1ヶ月)
(図2)ECサイトの機能面で気に入っているポイント
(図3)ECサイトの見た目で気に入っているポイント
(図4)使いたくなるECサイトの特徴
以上4つの図は質問項目3・6・7・8のアンケート結果です。まず、「一人暮らし」「実家暮らし」に関わらず、一か月に自由に使える金額には大きな差はないことが分かりました。この結果から対象の属性を4つに分類します。
今回は性別と自由に使える金額の2つを軸に計4つの属性に分類しました。属性ごとに仮説と実際の結果の違いを見ていきます。
属性1「男性・使える金額50,001円以上」
(図5)1ヶ月に使用できる金額が50,001円以上の男性が使いたくなるECサイトの特徴
この属性がECサイトで購入する物は「洋服・小物・雑貨」が最も多く、次に多いのが「日用品」となりました。使える金額に比較的余裕があるこの属性はよくファッション系統の購入にECサイトを利用する傾向があります。
実際に利用するサイトでは「ZOZOTOWN」や「2nd Street」などが挙げられ、デザインとしては「シンプルな見た目」を好むようです。また、使いたくなるサイトの特徴を問う質問では、「商品が探しやすい、調べやすい」の他に「自分へのおすすめ機能がある」ということも重要視していました。
属性2「男性・使える金額50,000円以内」
(図6)1ヶ月に使用できる金額が50,000円以内の男性が使いたくなるECサイトの特徴
この属性でもECサイトで購入するものは「洋服・小物・雑貨」が最も多く、次に「日用品」となりました。しかし、よく利用するECサイトでは「Amazon」が最も多く、属性1と比べるとセールを求めている傾向にありました。そして、「自分へのおすすめ」よりも「購入までのプロセス」や「商品」の探しやすさをECサイトに求めているという結果が出ました。
属性3「女性・使える金額50,001円以上」
(図7)1ヶ月に使用できる金額が50,001円以上の女性が使いたくなるECサイトの特徴
この属性はECサイトで購入するものとして「洋服・小物・雑貨」が一番多く、実際に利用するECサイトは非常に多様で「GRL」や「SHEIN」、「ホテルラバーズ」といったサイト名が挙がりました。見た目の傾向としては、「シンプルな見た目」を始めとして、「ポップでかわいらしい見た目」や「ゴージャスな見た目」といったものも選択されています。ECサイトに求める機能としては、「購入までのプロセスがわかりやすい」のほか「口コミが表示されている」というものが多く、口コミの重要度が男性 (属性1と2)と比べると多くなっています。
属性4「女性・使える金額50,000円以内」
(図8)1ヶ月に使用できる金額が50,000円以内の女性が使いたくなるECサイトの特徴
この属性では基本的に「Amazon」を利用する人が多く、「シンプルな見た目」を好む人の割合が最も多いという結果がでました。「Amazon」で気に入っているポイントは「商品が探しやすい」ことで、ECサイトに求める要素も「商品がわかりやすい、調べやすい」と「セールが多い」の2つが多く見受けられました。それに加えて属性3と同じように「口コミが表示されている」という意見も多くなっています。
大学生に刺さるデザインとは
では、大学生をターゲットとした場合、どのようなサイトデザインが適しているのでしょうか。
アンケートの結果から、どの属性の大学生もECサイトで購入するものの多くは、「洋服・小物・雑貨」であることが分かりました。洋服や小物などは実際に目にすることができないため、より商品のサイズや色など詳細に画面上で伝える必要があります。
(図9)ZOZOTOWN
「ZOZOTOWN」では商品の寸法はもちろん、着用しているモデルの身長、体重を掲載していて、購入者に対してより鮮明に服のイメージを沸かせることを可能にしています。他にも全体的に背景のテーマは白黒のスタイルであり、非常に見やすいシンプルな見た目となっています。
また、大学生が使いたくなるECサイトにおいて、「セールが多い」という要素が二番目に挙がりました。セール自体を開催しているサイトは多いですが、そのセール感を実感できていないことも考えられます。
(図10)SHEIN
「SHEIN」を見てみると、画面上部や端、そしてポップアップなどで「〇〇%OFF」といった文言を掲載しており、サイトを閲覧する上で必ず目に入る場所にセールを強調しています。
自由に使える金額の有無に関わらず「セールが開催されていること」の要素は好まれているため、「SHEIN」の例のように強くアピールすることで大学生の目に止まることも多くなるでしょう。
これまでの例はモール型ECサイトを例にとったものでしたが、変わって自社型ECサイトを例にとって見ていきます。
アンケートでは、「ベストケンコー」や「ホテルラバーズ」などが挙げられましたが、これらの回答者はいずれも「商品のわかりやすさ」「購入のしやすさ」を重要視しているようです。
(図11)ホテラバ
例えば「ホテルラバーズ」ではカラーコンタクトを扱っていますが、コンタクトが何色なのか、ワンデーなのかそうではないのかなど洋服の例のようにより詳細に情報を掲載しています。取り扱う商品に関わらず、商品の詳細をわかりやすく伝えることはZ世代に刺さる要素だと考えます。
前述した仮説では、自由に使える金額が少ない人はAmazonなどをよく利用すると考察しましたが、実際のアンケート結果では自社型ECサイトでも買い物をする人が見受けられました。AmazonやZOZOTOWNなどのモール型ECサイトとは違い、自社商品を扱っている分ある程度金額に余裕のある人が使うものであると予想していましたが、金額の大小にかかわらずこだわりを持って購買していることが伺えます。
また、自由に使える金額が少ない人はセールを開催していることが大々的に伝わるポップの掲載や、それに準ずるわかりやすい派手な見た目を好むと予想しましたが、どの属性もシンプルな見た目を好むことがわかりました。
まとめ
Z世代は、大きく分けると、「ある程度自由に使える金額が多い男・女と、あまり自由に使える金額が多くない男・女」のように属性を4つに区別することができます。
今回の調査では、属性によってECサイトに求める要素には差があり、機能面の好みにも独自性が見受けられました。全体を通して、商品の分かりやすさや調べやすさを求めている傾向にあるため、買い物をしに閲覧したタイミングで瞬時に求めているものを発見できるようなデザインを心がけると良いでしょう。
このように、それぞれ対象とする属性によってデザインを工夫することで、効果的にECサイトでの購買を促進させることが可能になります。
【出典】
(※1)NRI 第322回 NRIメディアフォーラム
(※2)インターネット通販における消費者の 生活環境と購買行動に関する研究
ネットショッピングの購買行動に関するアンケート 2022年12月実施
(図9)ZOZOTOWN
(図10)SHEIN
(図11)ホテラバ