【株式会社ビームス様インタビュー 〜後編〜】構築時の対応【内製化と外部連携編】
構築時の対応【内製化と外部連携編】
顧客満足度向上のため、運用はすべて内製化
弊社は、2014年の段階で商品の撮影は内製化していましたが、2016年5月にリニューアルした1次フェーズのタイミングで、ECシステム・物流(個人配送)・カスタマーサポートについても内製化しました。
2009年の自社EC立ち上げ時より、ECシステム・配送業務・カスタマーサポートをアウトソーシングしていましたが、あるレベルまで達すると、お客様のニーズとサービスに差が生まれてきます。しかし、弊社としては出来る限り、実店舗での接客・サービスに、EC側を近づけていくということを目指しておりましたので内製化を行い、顧客満足度の向上に取り組みました。
しかし、これらの内製化を実現するためにも、商品のマスター情報や画像・採寸情報の連携などあらゆる接続が必須です。さらに、もともと店舗の在庫を保管するための自社倉庫にEC専用の出荷ラインを設けるなど、社内にノウハウが無い中で、進めていかなくてはならず、非常に苦労しました。
ただ、今回の内製化を実現する上で、倉庫内のスタッフについても全て自社の社員で運営しておりますので、関係者全員で知恵を絞り、1つずつ課題を解決していき到達できたという経験は、弊社にとって大変貴重な財産になったと思っております。
各業界No1のサービスと連携 その数なんと17社
リニューアル前の自社ECサイトでは、売上データと在庫データの連携のみでしたが、5月の自社ECリニューアルと9月の統合サイトにゴールをしたタイミングで、全てがスムーズにお客様にベストなサービスを提供するためには、最初の段階から、それぞれの分野において、ベストな会社様と連携しておく必要があると考えていました。
しかし、会社が40年も続いていると、社内の全てのシステムが弊社用にカスタマイズされていまして、弊社の業務は円滑に回るように出来てはいるのですが、新たなシステムを導入する際は、これに連携先をフィットさせる必要がありましたので、大変困難な対応が必要となりました。
中でも、既存ECサイトと既存の顧客システムを、新たな顧客システムへ移行させる点においては、様々な問題がありました。もともと既存の顧客システムは300万人以上の会員数があり、自社ECサイトにも数十万人の会員数がありましたので、単純にファイルを取り込んで終わりという訳にはいきません。それぞれ別々のシステムは、作られた時期が別ということもあって、データテーブルで不一致となる項目が沢山ありました。
例えば、各項目の全角半角のルール決めや、電話番号が市外局番などで3つに分かれているのと、1つのデータテーブルにハイフン無しで入っているケースや、ECサイトの方には「住所」とは別で「配送先住所の複数登録」という項目があって、既存顧客システムにはその概念が無いといったケースなど、双方をどう合わせていくのかといった課題が膨大に発生し、その全てを調整することが必要でした。
さらには、自社ECオープンの1か月前に負荷試験を30回ぐらいテストしました。一般的なECサイトの負荷試験であれば、5回〜多くても10回で完了するはずなのですが、弊社の場合、連携先が16社もあったことで、どこで何が原因で止まってしまったのかを特定する必要がありました。そして、チューニングを行いテストする度に、その影響がまた連携先の各会社様にいってしまうことを重ねたので、約30回もの試験が必要でした。また、これら負荷試験と並行して、セキュリティー診断試験も同時に行っておりましたが、5月のローンチは目前でしたので、午前と午後にそれぞれ割り振って行うなど工夫をこらしながら進めていたのが大変印象に残っています。
これらの内容は、本当に断片的なものばかりですが、実際のサイト構築には、こういった様々な要素が必要となります。今回弊社の自社ECリニューアルプロジェクトと、その後のオフィシャルサイトとのプラットフォーム化におきまして、ecbeingの皆さんは一つ一つ丁寧に、そして確実にご対応いただきました。
導入後の効果
更なるサービス統一化に向けた歩み
5月にローンチした自社ECサイトですが、稼働後に細かな修正は必要でしたが、システムが止まってしまうようなトラブルなどは無く、システム的には安定稼動しており、売上も初月から順調に推移しています。
また、9月の2次フェーズとしては、お客様に対するサービスが一元化でき、プラットフォームのベースが出来たことに非常に満足しております。
今後は、このベースシステムを使って、今回のプロジェクトの目的である、店頭に来てくださっているお客様とのサービスの統一化のレベルアップを図っていきたいと考えております。
編集後記
今回のECサイトのフルリニューアルに合わせた、オフィシャルサイトと自社ECサイトの統合プロジェクトは、弊社の開発チームのパフォーマンスを非常に高く評価して頂き、ビームス様が目指すプラットフォーム化を一緒に実現することができたことを非常に嬉しく思います。
ローンチ後のシステムトラブルも無く安定稼動できており、売上も順調に推移されているということで、しっかりと結果を残すことが出来ました。
しかしながら、今回のプロジェクトの実現のためには、繁忙期の折り、現行サイトの売上確保・運営をこなされつつも、それらと同時進行で、1次フェーズと2次フェーズをご対応頂いた、株式会社ビームス 執行役員 DX推進室 室長 兼 オペレーション本部マーケティング部 矢嶋 正明 様をはじめとした、ビームス様のプロジェクトチームの 皆様の多大なるご尽力あっての事と深く感謝しております。17社もの企業との連携、30回を超える負荷試験、社内の関連部署との調整など、これ程のプロジェクトのご対応には、想像以上の労力がかかり、相当なご苦労があったことと思います。
また、今回のプロジェクトの企画段階においても、経営者層へのプレゼンや、関連部署に自ら歩みよっていかれた矢嶋様の計画性・行動力は、前職で同じEC責任者を担当していた筆者からみても憧憬の的として、大変勉強になりました。
ECの責任者をやっているけれども、なかなか社内で統合化するための調整や、その前段階として企画することもどうやっていったらよいか解らないという悩みは、多くのECの責任者につきまとっている大きな課題なのではないでしょうか。
今回のインタビューの中で、矢嶋様は「店頭のスタッフがお客様と繋がる、店舗以外の場所でお客様とコミュニケーションするための場所を創りたかった。」とコメントされていました。
これには、ECの責任者であっても、ECのことだけを考えていては成り立たない局面にきていると感じるシーンが増えているのは事実。 もはや、EC単体で伸ばせる売上の限界が見えており、部署ごとに、売上を取った取られたするよりは、ビームスが1つのビームスになるためのゴールをイメージして取り組むべきだという熱い想いが込められておりました。
オムニチャネルをうたっていながら、ECの売上をたてようとしてしまったり、関連部署や経営者層の理解を得られず、なかなか実現出来ない企業が多い中、ビームス様は、全社をあげて、「オムニチャネル=全社の売上を上げる」意識を持つという、頭がオムニチャネル発想になっているのです。
ビームス様が、「仕組みだけ用意してもうまくいかない」オムニチャネルで、ちゃんとシナジーを出されている背景には、言葉にする表面上だけの取り組みではなく、こういった会社をあげた意識合わせの徹底力があるからこそなのだと筆者は強く感じました。
部署ごとでの予算達成に評価軸が置かれているため、WEBから店舗にいかに送客しても、貢献とみなされない評価制度など、筆者も前職で経験しましたが、今の時代、勝ち残っていくためには、店舗だ!ECだ!卸しだ!などと、部署ごとの損得勘定をしている場合ではないのです。
今回のインタビュー記事が、読んで頂いた方々の今後のリニューアルプロジェクト計画において、有意義なツールになれば幸いです。
弊社としては、ビームス様が今後さらにレベルアップを目指されている、ECと店頭に来てくださっているお客様とのサービスの統一化を全力でサポートさせて頂き、良い結果が出せるように尽力したいと思います。